最終年度に実施した研究は、昨年度に引き続いて、特許を生み出した国際共同研究に関わった発明者の出身国についての実態把握と、研究パフォーマンスに与える影響についての分析に取組んだ。このテーマの先行研究で用いられてきたような特許の発明者の居住国情報に加えて、発明者の国籍の情報や発明者の名寄せの情報なども複合的に活用しつつ、特許を生み出した研究に関わった発明者の能力を考慮に入れたうえで、国際共同研究が研究パフォーマンスに与えた効果について、国際比較を含めて、統計的に分析を行った。結果としては、世界各国において中国やインド出身の研究者のプレゼンスが大きく拡大していることや、研究パフォーマンスの向上のためには研究プロジェクトを主導する発明者の能力が重要性であることなどが明らかになった。分析の結果は複数の査読付きの国際カンファレンスで報告を行った。また論文としても取りまとめることができる見込みである。 近年急増した中国企業が出願した特許は、海外への出願の比率や被引用件数等で測った意味での価値は平均的には必ずしも高いとはいえないが、世界経済の中で高度な研究開発の分野においても中国のプレゼンスは拡大しつつある。中国企業が国内外において取得する特許件数の規模等だけではなく、米国をはじめとする多くの外国企業の研究開発に中国出身の研究者が多数参加しており、被引用件数やサイエンス・リンケージの指標でみたときの価値の高い特許も多いこと等も中国の研究開発力の向上を理解する意味では重要といえるだろう。 研究期間全体を通じて、ディスカッション・ペーパーの公表、国際カンファレンスでの研究報告、査読付きの海外ジャーナルへの掲載等の研究成果はあったが、まだ論文として取りまとめる途中の研究内容もあるため、引き続き、最終的に専門誌に論文が掲載されることを目指して研究を進める予定である。
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