研究概要 |
平成25年度は本研究の1年目として,倫理審査の申請,一部データの入手,一部データのマイニング,コンピュータ環境の整備,経済モデルでの描写,解析,論文執筆を中心に行った。 研究計画に示した「経済的損失の計測」「制度変更・環境格差の影響の計測」「ソーシャルサポートの有無とその影響の計測」のうち,「制度変更・環境格差の影響の計測」の環境格差の影響を計測した研究で研究成果が出ている。 鈴木・岩本・湯田・両角 (2013, 医療経済研究, 24(2), pp. 108-127) は,高齢者の社会的入院(医学的な管理・治療の必要がないまま,長期入院を続ける状態)に着目し,2007年度の福井県の国民健康保険の医療保険レセプトデータから,入院患者に占める社会的入院患者の割合や入院医療費に占める社会的入院患者の医療費の割合を計測したものである。福井県を4つのブロックに分け,ブロック間での比較も行った。この分析により,介護保険制度の導入後も依然として,入院医療費に占める社会的入院患者の医療費の割合が小さくないことや,地域間で違いがあることがわかった。 両角・鈴木・湯田・岩本 (2013, 医療経済研究, 24(2), pp. 128-142) は,提供主体が偏在する通所リハビリテーションに着目し,新たな提供主体の登場が介護給付費や介護サービスの選択に与える影響を計測したものである。福井県の市町の2006年度と2007年度の介護保険レセプトデータを使用し,2007年4月から提供主体が登場した地域の住人を介入群,提供主体が存在しない地域の住人を非介入群とみなし,差の差分による推定から検証した。その結果,提供によって介護サービスの選択が変化し,一人あたりの通所リハビリテーションの介護給付費が増加する一方,それ以上に,一人あたりの他の居宅系サービスの介護給付費の合計額が減少することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,研究期間の1年目として必要な準備作業を行うとともに,一部で研究成果が出ている。また,平成25年度の研究成果の一つである両角・鈴木・湯田・岩本 (2013, 医療経済研究, 24(2), pp. 128-142)は,平成26年度以降の研究で,要介護度を分析する際の参考資料となる。
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