平成27年度は、本研究の3年目として、引き続き解析作業・論文執筆作業を行うとともに、学会報告や、公刊済み・報告済み論文の研究結果等をまとめる書籍の執筆作業を行った。 学会報告は、医療経済学会(2015年9月5日~6日)・日本経済学会(2015年10月10日~11日)で、訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションの利用環境の違いが要介護高齢者の要介護度に与える影響についての実証結果を報告した。 具体的には、福井県おおい町で起きた訪問リハビリテーション・通所リハビリテーションのサービスの提供開始を一種の自然実験とみなし、このイベントが要介護高齢者の要介護度に与える影響を、福井県内17市町の介護保険給付費データを使って計測した。 計測の際には、要介護度を順序付けされた数値として読み替え、順序プロビットモデルを使用し、サービスの提供開始に、個人属性とは関係なく一律に影響する部分と、個人属性によって影響の仕方が異なる部分があることを想定する推定式を用いた。その結果、個人属性によって影響の仕方に差が生じる点や、サービスの提供開始が部分的に要介護度の悪化の抑制につながる点を観察した。 また、書籍の執筆作業では、①研究で使用したレセプトデータ等の特性、②複数のレセプトデータ等を使用することの研究上の意義、③分析対象とした福井県の特徴、④レセプトデータ等による分析によって得られたエビデンス、⑤使用した分析手法について、その重要性を改めて認識した。
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