研究課題/領域番号 |
25780187
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 さやか 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20511603)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | body mass index / 痩せすぎ / 低体重 / 肥満 / 栄養摂取 / 運動 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
世界中で肥満の増加が深刻化する中、日本は男女とも肥満率が非常に低いだけでなく、医学的に痩せすぎとされる女性の比率が突出して高い。痩せすぎの決定要因についての実証分析は海外・国内を問わずほとんど行われていない。さらに、なぜ日本において他の先進国とは異なる長期的体型の変化、すなわち痩せすぎの増加や肥満率の減少が起きたかについてはよくわかっていない。本人やその子供の健康に多大な悪影響を及ぼすとされる痩せすぎの減少を図る上で、その原因解明は重要である。また、体型の決定要因を明らかにすることは肥満の減少にもつながる。 性・年齢別の身長と体重の平均値については日本には世界でも類を見ないほど正確かつ長期間に渡るデータが存在している。それらを用いた分析はすでに存在するが、データが入手可能な全ての時期と年齢層を対象とした包括的な研究はなかった。また、先行研究の結論は変数間の線形性の仮定に強く依存している可能性があると考えた。1947-2011年の国民(健康)栄養調査や1901-2012年の学校保健統計調査等を用い、日本人の長期的なBMI(Body Mass Index、体重÷身長2)の変化をノンパラメトリック回帰分析という線形性の仮定に依存せずに非線形性を許容する手法で分析した。分析の結果、男性は全てのコーホートで年齢と生年と共にBMIが増加したことがわかった。一方、女性では高度に非線形な結果が見られた。16歳以下の女性では、男性同様に全てのコーホートで年齢と生年と共にBMIが増加した。一方18歳以上の女性では、全年齢層で1930年代生まれのコーホートが最もBMIが高かった。また、女性のBMIは20代前半に一度減少し、その後増加に転じた。分析結果から、日本女性が痩せ始めたのは1930年生まれのコーホートが17歳になったあたりだと推定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本人の長期的なBMIの変化を分析し、研究成果を医療経済学会や研究会で発表するとともに、論文 ”The Decline in BMI among Japanese Women after WWII” としてまとめ、雑誌「経済セミナー」インタビューでも研究内容を紹介することができた。これらは当初の計画以上の成果である。研究計画書を提出した時点では個人単位の分析のみを予定していたが、個人レベルのデータが存在するのは1970年代以降のみであるため、長期的な体型変化の分析ができないという問題があった。そのため当初の予定を変更し、1947-2011年の国民(健康)栄養調査や1901-2012年の学校保健統計調査等の集計データを用い、日本人の長期的なBMIの変化をノンパラメトリック回帰分析で分析した。 それに加え、当初の計画に沿って、1974年から2010年の国民健康栄養調査および国民生活基礎調査全調査年の調査票情報を申請し、許可された。データの読み込み、変数の作成、および両データの突合を行い、分析を開始した。こちらは作業が難航し、当初の計画に比べ分析が進まなかった。国民健康栄養調査の調査票情報は今までほとんど利用されてきていないこともあってか、送られてきたデータに欠損があったために再度データ送付を依頼するなど、データ申請やデータ入手に時間を要した。さらに、変数についての説明文書が整備されていなかったため、変数作成には膨大な確認作業が必要であった。 さらに、当初の計画に沿って、慶應大学「慶應義塾家計パネル調査」「日本家計パネル調査」の利用を申請し、許可された。データの読み込みを行い、今後の分析に備えた。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、前年度にとりまとめた論文 ”The Decline in BMI among Japanese Women after WWII” が国際査読付き学術誌に採択されることを目標に、国内外の学会や研究会等で研究成果を発表し、研究へのフィードバックを得て、論文をさらに改善する。研究成果の概要を2014年4月の5th Australian Workshop on Econometrics and Health Econometrics および2014年7月のInternational Health Economics Association 10th World Congressに投稿し、いずれも口頭発表に採択されたため、丸山(研究協力者)が発表を行う予定である。 第二に、国民健康栄養調査および国民生活基礎調査の調査票情報を今年度も再度申請し、BMIの決定要因やBMIの分布の時系列変化等についての分析を進め、研究成果を論文にまとめるとともに、国内外の学会や研究会等で研究成果を発表し、研究へのフィードバックを得る。BMIの決定要因の変遷についての研究成果の概要を2014年7月のInternational Health Economics Association 10th World Congressに投稿し、口頭発表に採択されたため、中村(研究代表者)が発表を行う予定である。 第三に、慶應大学「慶應義塾家計パネル調査」及び「日本家計パネル調査」の利用を今年度も申請し、BMIの変化の決定要因についての分析を進め、研究成果を論文にまとめるとともに、国内外の学会や研究会等で研究成果を発表し、研究へのフィードバックを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 中村(研究代表者)がオーストラリア・シドニーに渡航しシドニー工科大学において丸山(研究協力者)と研究打ち合わせを行う予定であったが、前年度7月に本研究とは無関係の研究発表のために中村がシドニーで行われる学会に出席することになったため、シドニーへの渡航費を当研究課題で支出する必要がなくなった。 2. データ整理のため研究助手を雇用する予定であったが、適切な研究助手を見つけることができなかった。 1. 丸山(研究協力者)がオーストラリア・シドニーから日本に渡航して中村(研究代表者)と研究打ち合わせを行う。 2. 中村(研究代表者)が国内・海外学会の参加回数を増やす。
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