世界中で肥満が増加する中、日本は男女とも肥満率が非常に低い上、医学的に痩せすぎとされる女性の比率が突出して高い。日本特有の体型変化の理由を解明すべく、以下三つのテーマで研究を行った。 第一に、1947-2012年の日本人の長期的なBMI(Body Mass Index)の変化を、非線形性を許容するノンパラメトリック法で分析した。男性は全てのコーホートで年齢と生年と共にBMIが増加したことがわかった。他方、16歳以下の女性では男性同様に全てのコーホートで年齢と生年と共にBMIが増加したが、18歳以上の女性では、全年齢層で1930年代生まれのコーホートが最もBMIが高かった。日本女性が痩せ始めたのは1930年生まれのコーホートが17歳になったあたりだと推定できた。 第二に、1975-2010年の個票データを用い、エネルギーの摂取と消費の変化が日本人のBMIの変化にどのように寄与したか分析した。運動量の長期データは存在しないため、エネルギーの摂取と消費の均衡を仮定したモデルでエネルギー消費量を算出した。成人男女ではエネルギー摂取・消費とも減少し続けており、女性のBMI減少は摂取減少の影響が消費減少の影響を上回ったため、男性のBMI増加は消費減少の影響が摂取減少の影響を上回ったためと考えられる。職業別の分析から、女性の就業増加と男性の肉体労働減少により運動量の減少が女性より男性に顕著だったため体型変化の男女差が生じたと推定できた。 第三に、1975-1994年の個票データを用い、中学校給食の有無による子供の体型への影響を分析した。固定効果モデルを用い、給食の有無と観測不能な地域特性の相関による影響を除去した。全体的には給食による体型への影響は認められないが、社会経済的地位の低い世帯の子供に限って肥満減少効果が見られた。
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