研究課題/領域番号 |
25780190
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
別所 俊一郎 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (90436741)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 財政学 / 経済政策 / 地方財政 / 予防接種 / 所得再分配 |
研究概要 |
本研究では,日本の地方政府による所得再分配政策の決定要因とその帰結について研究する.日本の所得再分配政策の企画立案について中央政府の果たす役割は大きいが,その執行の多くは地方政府が担っている.また,地方政府は単独事業という形でさまざまな独自の事業を展開している.本研究では,既存研究では十分に扱われてこなかった市町村の政策の決定要因と帰結について,データを広範に収集し,計量経済学的手法を用いた研究を行う.本年度は,日本の市町村を対象とし,インフルエンザ予防接種への助成の効果を分析した.インフルエンザは予防接種法上の2類疾病であり,65歳以上の高齢者と60~64歳までの慢性疾病を持つ者が定期接種の対象となっており,接種への助成が行われている.この助成額は市町村ごとによって異なるが,市町村のなかにはこれらの人々以外に対しても接種の助成を行なっている.このような地域間のバリエーションを利用して,予防接種への金銭的助成が流行に与える効果と,助成の決定要因を統計的に検証した.インフルエンザの流行状況について直接の統計は存在しないが,国立感染症研究所がインフルエンザ流行状況警報システムを運用しており,その警報の情報を用いている.助成については,厚生労働省「予防接種に係る公的助成調査」,予防接種リサーチセンターのアンケート調査のデータを活用した.その結果,インフルエンザの予防接種は接種率に対して統計的に有意にプラスの影響を持っていることが確認されたが,インフルエンザの流行状況や死亡率に対しては統計的には有意な影響は看取されなかった.また,接種率への効果の大きさも政策的には必ずしも大きなものとは思われなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,日本の地方政府による所得再分配政策の決定要因とその帰結について個別の政策分野を取り上げて研究することとしており,インフルエンザ予防接種への助成の効果についての分析はほぼ終了している.他分野および政策の決定要因についてはいまだ準備段階にある.
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今後の研究の推進方策 |
医療費助成等の所得再分配政策の個別施策の状況の差について,各地方政府の財政状況・地方政府の首長の属性や議会の構成,地域の人口構成,上位政府の政策動向,周囲の同級地方政府の政策動向の影響などを考慮した分析を進める.また,これとは別に,各市町村の支出動向についての動学的分析について分析を行うこととしたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度には高額なデータ入力委託およびデータ購入を予定しており,この支払いに充てるため平成25年度の支出額を抑えたものである. 平成26年度には市町村に関係するデータ入力委託およびデータ購入を予定しており,これらに使用する予定である.
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