研究課題
本研究では,日本の地方政府による所得再分配政策の決定要因とその帰結について研究する.日本の所得再分配政策の企画立案について中央政府の果たす役割は大きいが,その執行の多くは地方政府が担っている.また,地方政府は単独事業という形でさまざまな独自の事業を展開している.本研究では,既存研究では十分に扱われてこなかった市町村の政策の決定要因と帰結について,データを広範に収集し,計量経済学的手法を用いた研究を行う.本年度は,日本の市町村に関する長期時系列データの動学的観点からの解析の結果を論文にまとめ発表した.この分析により,何らかの財政ショックに対して市町村がどのような政策手段でもって,どの程度の期間をかけて当該ショックを吸収しているのかを明らかにした.また,インフルエンザ予防接種の助成の影響と決定要因について分析を行った.その結果,高齢者へ予防接種への助成が1000円増加すると,接種率が1%ポイント増加するものの,流行状況とは相関を持たないことを確認した.また若者に対する助成は,インフルエンザの流行についての警報が出ている期間を短くする効果を持つ可能性があることを確認した.2010年時点のデータを用い,当時は定期接種でなかった肺炎球菌や水痘などに対する予防接種への助成がどのような要因と相関しているかを市町村レベルで検討したところ,市町村の財政状況や社会経済状況とはほとんど相関を持たず,周囲の助成の状況と高い相関を持つことが示された.このことは,予防接種への助成政策の決定が,都道府県内の他の市町村を参照団体とする横並び行動によって決まっていることを示唆している.
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Health Economics, Policy and Law
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10.1017/S1744133116000037
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