大きく3つの分析に取り組んだ。1つは、地縁組織系のNPOと民間企業との関係を対象とした、地域防災という公共財・公共サービスの供給に関する分析である。この分析では、企業が地域に義援金などの寄付を含めいかに貢献したか、またそのような地域防災への貢献を行うのはどのような企業であるかに着眼している。実際に被災し、その後復興を遂げた地域の民間企業にその後の平時における地域防災への貢献について取り上げ、地域住民とのネットワークやCSRの現状を問うた調査データを用いて検証を行った。その結果、地域防災の要でもある消防団への理解が大きな影響を与えているとともに、能動的なネットワークが地域防災への貢献に影響を及ぼしうることが示されている。 2つ目は、潜在的寄付者の選考に関する分析である。NPOのどのような財務情報を与えられれば寄付行動に至るか、またその情報を受ける個人の属性としてNPOとの関係の深いボランティア活動経験や、財務情報を読み取る会計知識が大きな要因となるのではないかと想定し、個人を対象とした調査データを用いて分析している。計量分析から、ボランティア経験と会計知識のいずれもが有意な要因であることが示されている。特に、ボランティア活動経験が大きな影響を有しており、実際に参加することが財務情報への直感的な読み取りかつ実感的な共感を得ることにつながることが推察され、潜在的な寄付者に対して組織の透明性を高めるだけでなく、実際の活動への参加を得られれば、NPOへの寄付行動が促進される。 3つ目は、地域のNPOに寄付する個人を明らかにする分析である。地域の何に関心をもって寄付を行っているかを、金額とともに明らかにすることができれば、どのような分野にどの程度のお金が流れていくかが明確になり、どのくらいの規模の公共財・公共サービスがNPOによって供給されうるかを推計することも可能となる。
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