研究課題/領域番号 |
25780207
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 企業金融論 / 企業統治 / 取締役会 / 監査役会 |
研究実績の概要 |
本年度は日本の上場企業の取締役会と監査役会の構成の決定要因に関する分析を行った。監査役会は日本企業のコーポレートガバナンスにおいてその重要性が指摘されながらもこれまで実証研究という形では研究されてこなかった分野である。取締役会構成に関してはこれまでにも研究されてきたが、本年度は先行研究を2つの点で拡張することを目指した。一つ目は監査役会が取締役会構成にどのような影響を与えているのか、二つ目は誰を社外取締役にするかにどのような要因が影響しているかについてである。 このために2005年から2010年の東証1部上場企業をサンプルとした実証分析を行い、以下の様な結果を得た。先行研究において社外比率に大きな影響を与えるとされている情報獲得コストなどは取締役会構成に対しては有意な影響を与えている一方で監査役会構成に対しては有意な影響を与えていなかった。取締役会と監査役会の関係は直近の社外監査役が多い企業ほど、社外取締役を選任しているという傾向は見られなかったが、2001年時点の社外監査役が多かった企業ほど、社外取締役を選任している傾向が見られた。この結果は、社外取締役を導入しない理由として頻繁にあげられる「社外監査役が機能しているから」とは合致しないものと考えられる。 また社外取締役、社外監査役に誰を選ぶのかがどのような要因により決定されているのかも分析した。そのために社外取締役と社外監査役のバックグラウンドを調査した。分析結果は海外売上高比率の高い企業が元官僚を社外取締役に迎えるなど、社外取締役はおおむね各企業の求める助言に応じて選任されていることを示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに日本の上場企業の取締役会、監査役会に関するデータ収集をほぼ終えることができた。またそのデータを利用した分析も執筆することができた。ゆえに、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は収集した日本の上場企業の取締役会、監査役会に関するデータを用いて、それらの構成などが企業行動、企業業績にどのような影響を与えているのかを分析し、論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
取締役・監査役のデータ集めに関してはアルバイトを雇用する予定であった。しかしながら、データ集めにはさまざまな判断が必要なことが判明し、ほとんどの作業を自ら行った。そのためアルバイト代として予定していた金額が未使用となった。またこれに伴い、自ら長期間にわたりデータ収集を行ったため予定していた海外出張を行うことができなかったことも未使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に行えなかったが海外学会への海外出張を行う予定である。またデータを拡張するために新たな役員データを購入する予定である。
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