研究課題/領域番号 |
25780207
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 企業金融論 / 企業統治 / 取締役会 / 監査役会 |
研究実績の概要 |
本年度は取締役会が経営者交代に及ぼす影響に関する分析を行った。経営者交代はコーポレートガバナンスの効率性を判断する指標としてこれまでも多くの研究で用いられてきた。なぜならコーポレートガバナンスが機能していれば、経営者の意思決定の結果として業績悪化が悪化すれば、経営者が責任を問われ交代させられると考えられるからである。本研究では1990年から2013年までの24年間の東証1部上場企業の経営者交代の決定要因を分析した。分析の結果は上記の24年間一貫して業績が悪化すると経営者交代の確率が上昇するという関係が確認できた。この結果は1990年代後半以降のメインバンク関係の後退後もコーポレートガバナンスに空白が生じなかったことを示している。しかしながら業績指標には変化が見られた。より近年ほど株主の利害を代表する指標であるROEや株価収益率が悪化した際に経営者が後退する確率が上昇していた。この結果は近年、経営者には以前よりも株主の利害を尊重した経営を行うインセンティブがあることを意味している。次になぜこのような変化が生じたのかに注目した分析を行った。その結果、海外機関投資家の持分が比率が高い、単一の海外機関投資家が3%以上の株式を保有している、社外取締役が3名以上在籍している、メインバンクと強い関係を持っている企業において、業績悪化時に経営者交代が起こりやすくなっていることが明らかとなった。また海外機関投資家の持分が比率が高い、単一の海外機関投資家が3%以上の株式を保有している企業ではROEの悪化時に経営者交代の確率が上昇していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
査読付雑誌への投稿のために新たなデータを新たに収集する必要が生じた。そのため株主構成に関するデータの収集を行っており、論文の完成に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在収集している株主構成に関するデータを完成させたうえで、それを用いた分析を加える。具体的には株主構成が経営者交代と業績の関係にどのような影響を与えるのかを分析する。そのうえで、この成果を取り入れて論文を完成させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データベースを購入し、日本企業と海外企業の取締役会の比較をする予定であったが、日本企業の分析に時間を要し、海外企業の分析に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
海外企業の財務データ、ガバナンスに関するデータベースの構築を目指し、データを購入することを計画している。
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