研究課題/領域番号 |
25780208
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
豊福 建太 日本大学, 経済学部, 准教授 (60401717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 協調の失敗 |
研究概要 |
本研究の目的は、金融危機の発生メカニズムにおいて、担保価値の決定メカニズムと債権者間のコーディネーションの問題が密接に関係しているが、現時点でこれら二つの要素の関係性を考慮し包括的な枠組みを構築した理論モデルは存在していないため、この両者の関係に焦点を当てた金融危機の発生メカニズムを理論モデルによって示すことである。 そこで本年度では、まず債権者としてメインバンクのような情報優位者と小口債権者のような情報劣位者が存在しているときに、メインバンクの健全性が悪化することによってこれらの債権者間のコーディネーションがどのように影響を受けるのかを考えた。その際、グローバルゲームという手法を用いた。ここでのグローバルゲームでは、情報優位者と情報劣位者がいるという非対称なプレイヤーの存在を仮定しているため、Corsetti, et al (2004)の手法を用いて事後的な情報優位者であるメインバンクの健全性の低下が事前の企業の資金調達に対してどのような影響を与えるのかを比較静学をして分析した。 その結果、メインバンクの健全性が高いとき、事後的な債権者間の協調が促されることにより、企業の事前の資金調達が効率的になり、企業のプロジェクトも効率的になる反面、事後的にメインバンクの健全性の低下が予想されるとき、事後的な債権者間の協調の失敗の問題が起きる可能性が高まることによって、企業の事前の資金調達とプロジェクトの選択がよりリスキーなものになり効率性が損なわれることを示した。 以上の結果は、“How the relationship bank’s prudency affects the coordination among creditors? ”という論文としてTheoretical economic letters誌に掲載されることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
債権者間の協調の問題に関する基本モデルを構築することに成功した。そこでは、グローバル・ゲームという手法を用い、さらにプレイヤー間の非対称性を考慮したモデルとなっている。以上のモデルを用いることで、今後は担保価値や決済手段を通じた債権者間のコーディネーションの問題を考えることができるため、そういったこれまで外生的に与えていたものをモデルに内生的に取り組んでくことができると考えているため。また、これらの問題を考える際に、契約の不完備性に基づいてプレイヤーの資金調達において、担保制約に直面することから、この制約とプレイヤーの資金選択などの関係性について、既存研究より明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に得た結論からさらに応用させ、債権者間のコーディネーションの問題がこれまで外生的に与えてきた担保価値の問題や決済の問題などを取り入れたモデルに拡張していきたいと考えている。そのさい、プレイヤー間の不完備契約においてプレイヤーが担保制約に直面するときに、プレイヤーの資金制約などがどのように変化していくのかということを考えたうえで、金融市場において引き起こす問題を考えるためのマクロモデルの構築や、金融政策との関係の中で金融市場の安定化を図るための金融政策の在り方について考察していきたいと考えている。
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