研究課題/領域番号 |
25780208
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
豊福 建太 日本大学, 経済学部, 教授 (60401717)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 決済市場 |
研究実績の概要 |
本年度は静学的モデルを構築し、本研究において重要となる結論を導き出すことに成功した。まず二人の企業家とその下で働く労働者がそれぞれいる状況で、労働者は一人の企業家からのみ賃金をもらう状況を考えた。そしてその労働者は、二つの企業が生産する財を消費するが、どちらの財をより需要するかは事前にはわからない状況を考えた。この時、まず労働者が労働の対価としてその企業の発行する債務証書を受け取る時、事後的に発生する財の相対価格の変動の影響を受けてしまうため、労働者の期待利得は低下してしまうことを示した。次に、こうした状況は、共通の通貨が導入されることにより解消されることを示した。すなわち、共通の決済手段の導入により、労働者が労働の対価として賃金を受け取ることになれば、事後的に発生する財の相対価格の変動の影響を回避することができるようになるため、労働者の期待利得を高めることになることを示した。この結論は、決済市場における効率性がどのように構築されているのかを考えていく上で重要な結論であると考える。また、こうした決済市場の効率性が損なわれる条件を定式化し、金融市場において銀行や企業などにどのような影響が生じ危機が生じる条件について今後考察していくつもりである。 以上で導いた研究成果は、来年度8月に京都で行われるEconometric society asian meeting などの機会に報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
静学モデルにより決済市場における効率性に関する重要な結論を得ることができた。金融危機の問題を考える際に、決済市場の機能不全が果たした影響が大きいことから、上記の研究成果は、本研究を大きく進捗させたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に導いた決済市場における効率性がどのような状況で損なわれていくのかを考察する。現在は、二つの企業家については対称な状況を考えているが、パラメーターを動かして非対称になった時にどのような問題が発生するのかを調べる。そしてそうした問題が発生した時、どのような政策や制度によって対応すべきなのかを考えていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会など研究成果の報告を次年度の国際大会に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内外の学会発表などへの旅費や学会参加費にあて、研究成果の精緻化に図る。
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