研究課題/領域番号 |
25780212
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80548305)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 企業金融 / 金融機関 / 貸出市場 / 資金配分 / 景気変動 |
研究実績の概要 |
本年度は、『法人企業統計季報』(財務省)の1980年度第1四半期から2014年度第1四半期までの個票データを用い、Davis and Haltiwanger (1992)の雇用再配分の手法を援用したうえで、企業の資金調達行動の異質性および資金再配分の性質について実証分析を行った。現状得られているおもな結論は以下である。(1)景気変動のどの局面においても、企業間の資金再配分(credit reallocation)が相当の規模で生じており、企業の資金調達行動は本来的に非常に異質である。(2)credit destructionの変動はcredit creationの変動よりも大きい。これは、credit creationにはサーチやスクリーニングなどの様々な費用が生じるとする、情報の非対称性の理論やサーチ・マッチング理論の予測と整合的である。(3)日本企業における資金再配分の規模は1990年代に急激に低下しており、この時期に貸出市場の資金再配分機能が低下していたとする議論と整合的である。(4)日本企業の資金再配分は景気変動と有意な相関をもつ。具体的には、credit creationは景気と順相関(procyclical)、credit destructionは景気と逆相関(countercyclical)であり、比較的強いcredit creationの順相関に牽引される形で、credit reallocationは景気と順相関(procyclical)である。(5)中小企業における資金再配分をみると、credit destructionが景気と逆相関(countercyclical)である一方で、credit creationとcredit reallocationは景気変動と有意な相関をもたない。これは、情報の非対称性の問題がより深刻な中小企業においては、景気拡張期の正の需要ショックに対するcredit creationの反応が大企業より小さい可能性を示唆している。本結果は、「日本企業の資金再配分」として、独立行政法人経済産業研究所のディスカッションペーパーとして平成27年5月に公表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状の分析は、日本企業の資金調達行動のうち、負債調達の分析に留まっており、株式調達の分析を追加的に行う必要がある。今後、現状の結果を論文にまとめて投稿する作業と同時に、負債調達と株式調達を含めた包括的な分析を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
現状で得られている研究成果は、学会やコンファレンスなどで報告し、他の研究者から意見や助言を得るとともに、それらをふまえて論文の修正を行い、最終的に学術雑誌に投稿する。また、それと同時進行で、現状の負債調達の分析に株式調達も含めた包括的な分析を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データセット構築作業や分析作業が想定よりも遅れ、具体的な成果が出るのが本年度末となったため、本年度に予算計上していた成果報告のための国内旅費等が未使用となったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年度に追加的に発生するデータ・資料購入費、および成果報告のための国内旅費、投稿に係る英文校閲費用等として計上。
|