本研究は、東京の機械工業を対象に、近現代日本の経済発展における都市工業の意義と特質を解明するものである。多面的な把握のため、特許権取得動向、工業教育を通じたネットワーク、業者間の取引ネットワーク、災害復興の過程の4点を分析の起点とした。 研究の結果、中小零細経営を含む多様な製造業者が、豊かなネットワークに支えられて事業の創出・展開に携わるさまを描き、災害後の再集積を促した要因も指摘した。また開業の動向に着目し、都市工業の実態を労働市場、社会保障、産業構造、地域社会などの特質と関連づけて考察した。これらの知見は今後、都市の経済社会の構造を通して日本経済の特質と変容を把握するための基盤としたい。
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