本研究は、1960年代以降の北海道の主要大手炭鉱を対象として、炭鉱の閉山がどのような過程をたどって行われたのか、および閉山をめぐるコストとベネフィットが利害関係者間でどのように調整・分配されたのかを検討することをとおして、炭鉱閉山が社会・経済にどのような直接的影響を与えたのかを明らかにするものである。第1~第2年度は、文書資料、インタビュー資料の収集と検討を実施した。最終年度は、一昨年度まで収集してきた文書資料、インタビュー調査を整理、検討するとともに、追加的に必要と考えられる労働組合関連の文書資料の収集、検討を行った。本研究の実績は以下の2点に要約される。 第1は、閉山過程の解明である。他地域での経験を踏まえて、北海道では企業、労働組合、北海道、市町村、国のそれぞれが役割を分担していくことをとおして、閉山が徐々に定型化していったことが明らかとなった。 第2は、閉山をめぐるコストとベネフィットの調整・分配についてである。調整過程において、北海道と労働組合が主要なアクターとしての役割をはたすだけでなく、上記のアクター間の連絡・調整を担っていた。また、コストは行政と企業が、ベネフィットは労働組合(正規労働者)に重点的に配分されていたとの見通しを得ることができた。この点は、最終年度に追加的に労働組合関連資料の収集、検討をした結果得られた知見である。 当初計画ではインタビュー調査を重視していたが、調査対象者のご体調等の理由でインタビュー記録を十分に蓄積することはかなわなかった。しかしながら、文書資料の発掘等は計画どおりに実施でき、上記のような研究実績を得ることができた。以上の研究成果については、研究期間中に取りまとめることができなかったため、研究期間終了後に口頭発表・論文等で公表する。
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