本研究は、昭和戦前期の灘酒造業が全国ブランドを確立するプロセスの中で、①酒造労働、②醸造技術、③酒造原料米をいかにして獲得し、他産地との競争力を高めたのかという点について実証研究を行い、以下の点が明らかとなった。 ①企業側が複数の製造場内で杜氏・蔵人の競争を促しながら、全体として生産される清酒の品質向上に努めていた。②当時の灘では新興産地に比べて高等教育機関出身の技師が活躍する場が少なく、杜氏の地元における夏期講習会の意義が大きかった。③生産地との長期取引で得られる良質な酒米だけでなく朝鮮米も含めて多種の米が用いられていた。
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