本研究は、「養成工」と呼ばれる労働者を研究対象としており、「養成工」とは「戦後の新制中学(戦前は小学校)を卒業後、その費用と給与(奨学金)を企業が負担する、座学と実習からなる3年程度の企業内教育を受けた技能者」のことである。本研究(養成工研究)の目的は、戦後日本の製造業発展の原動力を探ることである。そのために、戦後一貫して現在まで養成工教育を存続させている三社(トヨタ自動車、デンソー、日立製作所)を事例に、養成工の役割を検討した。 最終年度および研究期間全体を通じた研究成果としては以下の点が挙げられる。まず第一に、養成工の役割が事例分析で検討され、「どのような形で養成工が企業に貢献し、その発展の原動力となったのか」が明らかにされた。その研究成果は、3つの口頭発表と2つの論文発表を通して公表された。口頭発表は、「養成工と高校卒ブルーカラーの代替と補完」(政治経済学・経済史学会)、「戦後復興期および高度成長期における養成工の育成とその役割」(札幌学院大学経済学研究会)、「企業内教育の量的拡大と養成工の役割」(東京大学経済史研究会)である。論文発表は「戦後日本における養成工の役割」(札幌学院大学総合研究所『経済論集』第7号)、「養成工と高校卒ブルーカラーの代替と補完」(政治経済学・経済史学会『歴史と経済』第223号)である。 第二に、養成工を含めた戦後の企業内教育の数量データの蓄積が進んだことが挙げられる。労働省が実施した調査資料を収集でき、これによってどの地域のどの企業がどのような企業内教育を実施していたのかを量的に把握できるようになった。すなわち、今後の研究で、企業内学校の全国の分布を検討できるようになった。 第三に、トヨタ自動車、デンソー、日立製作所に関する資料の蓄積が進んだことが挙げられる。すなわち、今後の研究で、養成工が当時果たした意義のさらなる解明の足掛かりができた。
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