本研究は、19世紀末から20世紀初頭の華北地域におけるドイツ鉄道事業、とくに山東鉄道事業を分析したものである。19世紀末以降、山東経済は、麦稈真田や落花生などの農産品輸出によって世界経済と密接に結びついた。その過程で、ドイツ資本によって建設された山東鉄道は、その物流を加速させる役割を果たした。この山東農産品の流通をめぐって、山東鉄道と津浦鉄道との間で、またそれらの鉄道の輸出港であった青島と天津との間で激しい競争が生じることになった。本研究は、ドイツの未公刊史料を分析することで、上述の物流競争によって山東経済が世界市場の景気変動に作用されやすいものへと変化する過程の一端を明らかにした。
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