研究課題/領域番号 |
25780222
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
攝津 斉彦 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (30613393)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済成長 / 地域間格差 / 職業構造 / 産業別労働生産性 / 第三次産業 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度作成した推計結果をもとに、(1)近代における産業別労働力の構成および産業間の生産性格差の推移、(2)近代における地域間(府県間)格差の推移にかんする分析を共同研究者とともにおこない、分析結果の公表に努めた。 (1)については、副業の存在を考慮した場合、(昨年度あらたに推計値を得た1874年を含む)明治初期における農林水産業と鉱工業の労働生産性格差は、これまで信じられてきたほど大きくない、むしろ両者の間にはほとんど差がないこと、その一方で農林水産業とサービス業との間には大きな格差が存在していたことが示された。なお、このテーマにかんする分析結果の一部は、2014年4月にオーストリア・ウィーンで開催されたEuropean Social Science History Conferenceで研究代表者によって報告された。 (2)にかんしては、近代における府県間の格差を人口1人あたり県内総生産(Gross Prefectural Growth: GPP)の変動係数によって計測し、1874年の時点では相対的に低かった地域間格差が、松方デフレ以後急速に拡大し、その後高止まりした後一時的な格差縮小期を経て、戦後高度成長期に格差が急速に縮小していったことおよびその要因を示した。また、このテーマにかんする分析結果の一部は、2014年9月にトルコ・イスタンブールで開催されたAsian Historical Economics Conferenceなどで共同研究者によって報告された。さらに2015年3月には、Fukao et al. (2015) Regional Inequality and Industrial Structure in Japan: 1874-2008として出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請の際に計画していた、生産面からの第三次産業GDP推計については十分に進めることはできなかったが、昨年度作成した推計値に基づく分析を書籍の形でまとめることができたことは、大きな進展であった。今後は、現在の推計値を批判的に検討し、より堅牢な推計値が得られるよう注力したい。
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今後の研究の推進方策 |
幸運にも、2015年度はサバティカルにより英国ケンブリッジ大学歴史学部に1年間滞在できることになった。十分な研究時間が得られる本年度は、これまで停滞していた警察統計のデータ入力作業を再開するとともに、産業構造や地域間格差にかんする国際比較研究や、江戸時代の職業構造にかんする推計など、これまでの推計結果を拡張、補強する作業を進めたい。また、本年度(2014年度)の研究成果に若干の改訂を加えた分析結果が、2015年8月に京都で開催されるWorld Economic History Congressで報告される予定である。
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