最終年度においては、主に以下の2点に関する調査を実施した。第一に、前年度までに積み残していた課題である、平成22年度医療施設調査(厚生労働省)における「人口10万対病院病床数」上位3県(高知、鹿児島、熊本)と下位3県(愛知、埼玉、神奈川)の、全医療法人立病院を対象としたアンケート調査を実施した。なお、上位3県については、現地において、全医療法人立病院の財務データの収集も行っている。第二に、病院ガバナンスにおける医療関連データの扱いの重要性に鑑み、東北6県(青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島)の全病院(医療法人以外も含む)における医療関連データの公表状況についての調査を実施し、あわせて東北6県全病院のデータ公開状況に関するデータベースを作成した。本研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、医療法人病院のガバナンス構造と組織的意思決定の実態に関する基礎的知見を得ることができた。すなわち、医療法人立病院では自らの病院のガバナンスに関して、おおむねチェックアンドバランスが機能していると感じていること、トップダウンの意思決定がなされていること、法人と医療機関との間での経営判断の対立は少ないことなどである。また、病院ガバナンスにおける医療関連データの扱いの重要性に着目し、特に外部への医療情報公開の現状について行った調査より、わが国における医療情報公開に関する政策変遷によって、医療情報が一律に秘匿されるべきものではなく、患者の選択に資するものであるという条件下で、より積極的に開示されるべきものとなってきているが、各自治体の医療情報公開の現状としては、ICTの進展に伴って、検索システムの利便性は向上しているものの、実際に公開されている情報の内容については医療の質に関わるようなところまで踏み込んでいないことや、医療機関ごとに提供されている情報の質に差があることが明らかとなった。
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