研究課題/領域番号 |
25780227
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
林 正 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (50434270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 研究開発 / 立地選択 / スピルオーバー |
研究概要 |
平成25年度は、1.企業や大学の研究組織間における知識のスピルオーバーと研究開発拠点の立地選択に関する先行研究のサーベイと分析、2.発明活動の地理情報に関するデータベースの構築、3.情報通信企業におけるソフト開発での知識の流出入に関するヒアリング調査を進めた。まず、知識のスピルオーバーの影響要因として、先行研究で注目されてきた地理的距離や文化的距離、また人的交流に加えて、知識のサイエンスリンケージに注目した分析を行った。1985年から2004年までの企業と大学、また政府機関と病院によって出願された米国実用特許の特許間引用データを用いて分析を試みた結果、スピルオーバーの源泉となる知識がサイエンスリンケージを伴う特許である場合、そうではない場合と比べて、地理的距離によるスピルオーバーの抑制効果は緩和され、知識は地理的に遠く離れた場所まで普及しやすくなる傾向が見出された。さらに、発明者間の人的交流によるスピルオーバーの促進効果は強化され、知識が人脈を介して普及しやすくなるという傾向が見出された。なお、サイエンスリンケージを考慮しても、国家間での言語および宗教の差異や、知的財産権保護制度の頑健性の差などの制度的距離は、いずれもスピルオーバーを抑制する要因となっていた。ただし、スピルオーバーに対するサイエンスリンケージの影響は、その測定方法によって大きく変化するため、今後はそのメカニズムをより深く検討していく必要がある。また、ヒアリング調査を通じて、サイエンスリンケージが他技術分野と比べて比較的高い情報通信のソフトウェア開発分野では、他の研究組織からの先端的知識の流入と流出は細分化された技術分野を超えて発生することが想定されにくいこと、そして研究者の離職による知識の流出について雇用契約の内容が主な対応手段とみなされる傾向があることに関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、主に研究開発拠点の立地選択と知識のスピルオーバーに関わる近年までの先行研究のサーベイを行い、特許の発明活動の地理情報を用いたスピルオーバーのパターンに関する予備的な分析を行った。今後はこれらの知見を研究資料としてまとめ、発明活動の地理情報に関するデータベースの補強と更なる調査を実施しつつ、仮説の提示と検証を行う計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在まで作成を進めてきた発明活動の地理情報のデータベースをさらに補強し、その変数の妥当性に関するヒアリング調査を実施する。当該データベースとヒアリング調査、そして先行研究のサーベイから得られた知見を用いて、仮説検証を目的とする定量分析を行い、その研究成果を論文および学会での発表を通じて公表することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に作成を進めた発明活動の地理情報に関するデータベースは、予想を上回る大規模なデータの処理を必要としており、現在も作成を継続中である。よって、当該データベースを用いた変数の妥当性に関するヒアリング調査も実施できなかったため、ヒアリング調査にかかる費用が次年度へ繰越となった。 平成25年度において、大規模なデータの解析を実施するための統計分析ソフトウェアSTATA 13は購入済みであり、それらのデータを処理できるコンピューターも完備している。そのため、次年度以降に必要となるのは、主に発明活動の地理情報のデータベースにおける変数の妥当性についてのヒアリング調査を含んだ国内外の調査旅費、そして学会への参加費用などである。
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