研究課題/領域番号 |
25780231
|
研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
林 有珍 山梨学院大学, 現代ビジネス学部, 講師 (40633889)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心理的契約 / ワーク・ライフ・バランス |
研究実績の概要 |
本研究は育児と仕事を両立する女性正社員を対象に、「出産・育児」というライフイベントが所属組織との雇用関係にいかなる影響を与えるかを明らかにすることに目的があり、その検証を通じて、多くの女性正社員が出産や育児を理由に雇用継続をあきらめる現状の問題を解決することにあたっての示唆を与える面で研究の意義が大きい。 本研究で主に扱う概念は「心理的契約」である。出産前後において「正社員」という雇用形態に違いは生じないものの、短時間勤務等の育児支援施策の利用により仕事の幅や量の調整が行われることも多く、それに従い賃金や処遇面でも多少の変更が余儀なくされていることから、女性正社員が認識する組織への関係性・義務認識・組織への期待も変動することが推測される。 平成28年度は、主にメール・電話を通じて定量分析に詳しい研究者の方々と情報交換をし、平成27年度で実施したサーベイ調査を分析することに集中した。その結果、子供を持つ女性正社員の多くが出産前に比べ心理的契約の中身が変化しており、その違いは子供を持たない女性正社員と比べてより顕著であった。また、育児休業(平成28年4月~平成28年9月)につき、仕事と育児の両立を行っている女性の聞き取り調査を続き、述べ19名の定性資料が獲得された。同集団内には出産育児を理由に退職した女性や出産前から就労していない女性もいたため、同時に聞き取り調査を行った。聞き取り調査の結果、出産イベントによる心理的契約の変化はすべての女性において観察可能である一方、その変化の度合いは職場内の上司との関係がどれほど健全かに大きく左右されていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来、平成28年度は本研究の最終年度であり、すべての作業が終了しこれまでの結果をとりまとめることになっているが、今年の研究進展がやや遅れているため、一年間の助成期間延長を行っている。 その理由は、研究者本人が初めての出産を経験し6か月間の育児休業を行ったことによる。育児休業中にも聞き取り調査は実施しており、現在まで19名の女性正社員から定性資料を得ている等、研究を継続して行ってきたものの、当初平成28年度に行う予定であったサーベイ調査票の最終確認作業が年度内に間に合わず、平成28年の予算を平成29年度に繰越すうえ、次年度に調査を行うことになった。育児休業による助成期間の延長のお願いを提出し許可を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
育児休業により1年間の助成期間の延長が許可されたため、平成29年度が本研究助成の最終年度に当たる。 平成29年度の研究計画は次の通りである。 4月~6月:これまでの定性資料に基づくサーベイ調査実施 7月~10月:定量分析 11月~3月:研究結果のとりまとめ、報告
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に研究者本人が育児休業を取得した。育児休業中はほぼまともな作業ができないため、本来、行う予定だった調査の準備が多少遅れることにより、今年度中に調査を実施することが間に合わなかった。 本研究は、出産イベントを経ることでその前後における女性正社員の心理的契約の変化を検証しその後の職場復帰を支援する職場内要因を探索・提案することを目的をしている。したがって、せっかく研究者本人が初出産を経験することになったことから、これまでの聞き取り調査の分析を精査・再検討しさらに質の高いサーベイ調査を行うべきと考えた。そのため、予定していたサーベイ調査項目を見直した。育児休業による助成期間の延長申請が許可され、次年度に今年度の予算を繰越すことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
サーベイ調査を行う予定である。すでに見積もりが完了しており、1000名の従業員を対象に心理的契約と職務態度間関係を調べる。すでに女性正社員の出産前後における心理的契約を調べているため、主な調査対象の心理的契約が他の属性(性別・雇用形態の違い)を持つ従業員たちの心理的契約とどのような違いがあるのか検討することにその目的がある。 平成29年度は研究助成の最終年度に当たり、女性正社員の出産前後における心理的契約がその他の属性を持つ従業員と相違し、具体的にどのように相違しているのか、また、組織との健全な心理的契約を出産後にも維持し続ける人がいれば、それはどのような職場要因によるものなのか、について検証・取りまとめる。
|