研究課題/領域番号 |
25780241
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
和田 剛明 青山学院大学, 経営学部, 助教 (60401197)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イノベーション / 競争戦略 / 競争優位性 / コンテンツ産業 / 産業集積 |
研究概要 |
今年度(平成25年度)は、研究の基礎を固めるために既存研究の整理、国内の企業調査、産業資料の収集を行った。研究を進めるにあたっては、コンテンツ産業研究会のメンバーと協力し、定期的な会合で討議を重ねることにより、多面的な視座を取り込んだ理論構築を行った。具体的な研究成果の概要は、次のとおりである。 第一に、以前に調査を行った福岡市のゲーム開発企業の集積事例に対し、本研究における問題意識に基づき分析を行い、コンテンツ産業研究会メンバーとの共著論文「Platform paradox」として発表した。本研究においては、標準的なゲームエンジンやミドルウェア(開発支援ソフト)が登場し、世界的な開発環境の画一化が進む対抗策として、産業集積による地域的な競争優位性の構築が有効であることが確認された。 第二に、ゲームソフト開発企業に対するインタビュー調査を行った。調査にあたっては、現在のゲームソフト市場がスマートフォン向けゲームアプリにシフトしつつある実情を受け、スマートフォンアプリ開発企業も対象に含めることとした。スマートフォンアプリ開発企業に対する調査からは、サービス開始後も継続的にコンテンツを作りこみ続ける改善能力・組織能力といった、日本企業の特性に親和的な競争優位性が確認された。研究の成果は、一橋大学IIRサマースクールにおいて、コンテンツ産業研究会のメンバーとの共同報告「革新的イノベーションを実現するマネジメントの探求―ソーシャルゲームの事例に基づく考察」として発表した。本研究は、平成26年度以降も継続し、より精緻化されたものとして論文化する予定である。 第三に、現在の国内ゲームソフト開発企業の実態について把握するために、プラットフォーム企業およびゲーム開発企業がウェブサイトで公開している資料等を情報源とし、産業資料の入手・整理に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲーム開発企業を対象としたインタビュー調査を進める中で、26年度の研究を進めるための、ゲーム開発企業関係者およびコンテンツ産業研究会メンバーとの協力関係の構築を進めることが出来た。 上記のインタビュー調査に付随し、ゲーム業界関係者から、ゲーム開発活動の先端的事例を分析するのであれば、家庭用ゲーム機用ゲーム開発活動のみを対象とした調査でなく、スマートフォン用ゲームアプリ開発活動も対象とするべきであるとの指摘を受けた。これに従い、研究対象を家庭用ゲーム機用のゲーム開発企業から、スマートフォン用ゲームアプリ開発企業まで含める修正を行った。スマートフォン用ゲームアプリ開発企業を対象とした予備的なインタビュー調査からは、競争優位性につながる企業活動の一端が判明した。研究目的を達成するための一定の手がかりが得られ、研究対象の修正は大いに意義があったといえる。 一方で、研究対象を修正した結果、研究計画の変更が必要となり、当初予定していた産業データの収集、複数企業を対象としたインタビュー調査の実施といった活動まで達成することが出来なかった。 以上を勘案し、現在までの達成度について「やや遅れている」の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
スマートフォン用ゲームアプリ開発企業に関して、25年度と同様にコンテンツ産業研究会メンバーと連携し、インタビュー調査を継続する。これと並行して、当初予定していた産業データの整理を進め、インタビュー調査をとおして得られた個別企業の活動の背後にある、産業構造の影響について考察する。 その上で、ゲーム産業において有効と思われる競争行動について仮説を導出し、広範な企業を対象としたアンケート調査によりこれを検証する。 以上の作業により、オープン・イノベーション化が進んだ状況においてどのように競争優位性を構築するべきか、一般に適用できる知見を導出し、学会での報告・ジャーナルへの投稿によって成果を広く公開することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の現在までの達成度でも述べたが、ゲーム業界関係者から、ゲーム開発活動の先端的事例を分析するのであれば、家庭用ゲーム機用ゲーム開発活動のみを対象とした調査でなく、スマートフォン用ゲームアプリ開発活動も対象とするべきであるとの指摘を受け、研究対象を拡大した。この結果、当初予定していた産業データの収集の対象および使用する資料の再検討が必要となり、予算を次年度以降に繰り越すこととなった。 調査対象の拡張に対し、新たに必要となる資料の選定を早急に行い、保留していた資料購入を実行に移すこととする。
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