研究課題/領域番号 |
25780243
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
山本 聡 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (60632346)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中小企業 / 国際的企業家志向性 / 地域公的機関 / 社会的関係資本 / エフィカシー / セレンディピティ / 輸出市場志向性 / 学習志向性 |
研究実績の概要 |
【研究目的】本研究では、国内中小企業の海外市場参入プロセスにおける地域公的機関の役割を、経営者の企業家行動の文脈から分析している。平成26年度は前年度の部品企業における研究成果を踏まえた上で、伝統工芸品企業(地場産業企業)における質的調査を行った。
【研究実施内容】平成26年度の研究計画に則り、岩手県の南部鉄器企業、大阪府の畳企業、岐阜県の和紙企業、広島県の和筆企業、福島県の部品企業、そして、次年度に跨ぐ調査対象として、広島県の牡蠣養殖企業の海外市場参入プロセスに関する聞き取り調査を行った。その上で、アントレプレナーシップ理論を踏まえた上で、対象企業の海外市場参入にいたる企業家行動を分析した。その結果、「伝統工芸品企業は海外市場参入に際し、文化的障壁に直面すること」、「それを克服するために、公的機関に『便乗(ピギーバッキング)』し、『自己有効感(自己有効感)を得ること」、その上で、海外見本市などで「偶発的発見(セレンディピティ)」を得ることが示された。すなわち、経営者が地域の公的機関とのつながりから得た「ソーシャル・キャピタル」が海外市場参入に決定的な役割を果たしているのである。これらの知見を得られた。また、研究計画に則り、多摩信用金庫と連携し、平成26年12月に多摩地域の中小企業に海外市場参入に関するアンケートを実施した。計画どおり、70%近くの高い回収率を示し、本プロジェクトで示した幾つかの仮説を実証した。また、本研究成果を援用して、ドイツ・オーストリアの企業の調査も実施している。
【研究成果】平成26年度中に、本研究成果として、4回の国内学会報告、2回の海外学会報告、2回の共同シンポジウム、複数回の依頼講演を行った。また、前年度に投稿した論文(ベンチャー学会誌)を発刊した。それ以外に、2本の大学紀要論文を上梓した。現在は平成26年度の研究成果の査読論文投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は研究計画に示したように、岩手県の南部鉄器企業、大阪府の畳企業、岐阜県の和紙企業、広島県の牡蠣養殖企業などに聞き取り調査を行った。その結果、「伝統工芸品企業は海外市場参入に際し、文化的障壁に直面すること」、「それを克服するために、公的機関に『便乗(ピギーバッキング)』し、『自己有効感(自己有効感)を得ること」、その上で、海外見本市などで「偶発的発見(セレンディピティ)」を得るこという一連のプロセスが示された。すなわち、経営者が地域の公的機関などとのつながりにより形成された「ソーシャル・キャピタル」が、海外市場参入に重要な役割を果たしていることが示されたのである。また、前年度の予備的アンケート調査を踏まえた上で、多摩信用金庫と連携して、「多摩地域の経営者と海外事業展開に関するアンケート」を行った。当該アンケート結果により、前年度・今年度の質的調査から得られた幾つかの仮説が実証された。
それらは、平成26年度中の4回の国内学会報告、2回の海外学会報告、2回の共同シンポジウム、複数回の依頼講演で報告・成果の普及を行った。また、前年度に投稿した論文(ベンチャー学会誌など)を発刊した上で、新たに2本の大学紀要論文を上梓した。現在は当該研究成果の査読論文投稿と平成27年度中の国内・海外学会報告を準備している。
留意事項としては、アンケートにかかる費用が当初の予算計画よりも大幅に低減されたことである。そのため、平成27年度もアンケートを発送することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は研究計画で提示したように、質的調査の面では、フォロー調査を実施する。既に広島県の牡蠣養殖企業への聞き取り調査、茨城県日立地域の部品企業への調査を実施、ないしは実施する予定である。また、千葉県や新潟県の企業への調査も計画している。また、平成26年度のアンケート調査の費用が当初の計画を大幅に下回ったため、今年度もアンケート調査を実施する予定である。これ以外では、本研究事業の最終年度のため、成果の普及に注力することにする。既に、平成27年6月には中小企業研究の著名な国際学会であるICSB2015ドバイでの報告が受理され、Proceedingも発刊予定である。また、国内学会では平成27年7月の企業家研究フォーラムでも報告が受理されている。平成27年度中には、これ以外に、国内・国外の学会報告を1回ずつ行う予定である。また、研究成果の論文・書籍への投稿も引き続き精力的に実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は中小企業に対するアンケートを行ったが、回収率の向上や詳細な情報入手のため、多摩信用金庫と連携した。その結果、予期せずして、アンケート費用の低減が起きた。また、案ケートの実施を計画していたため、研究調査のための出張費を個人研究費で代替した部分があった。以上の理由から、平成26年度の研究費に余りが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度実施のアンケート、研究調査・学会出張、資料購入に充当する予定である。
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備考 |
只今、準備中です。
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