本研究では、再生可能エネルギー産業を対象にして、製品・サービスの設計思想である「アーキテクチャ」概念と産業政策の両面から企業の国際競争力への影響及び技術伝播のメカニズムを解明することを試みた。従来、企業の国際競争力とアーキテクチャ、国際競争力と産業政策との関係に着目した実証研究は進められてきたが、三者の関係を同時に分析した研究はほとんどない。再生可能エネルギー産業では、アーキテクチャのみならず、各国のR&D・投資インセンティブなどの産業政策が国際競争力に及ぼす影響は大きい。本研究では、同産業を対象として、アーキテクチャの変化および産業政策が国際競争力に対してどのような影響を及ぼすのか、そのメカニズムの解明を試みた。 28年度は、先に構築したフレームワークに基づき、太陽光発電産業の情報収集を行うとともに、上記三者間の相互関係について分析結果をまとめた。市場シェアデータについては、データブック、公開情報等により若干のアップデートを図った。産業政策や企業戦略については、中国を中心に国際シンポジウムに参加するなどして情報収集を図った。 これらの調査・研究の結果、アーキテクチャのモジュラー化により中国企業の参入が促進されたこと、加えてFIT等の普及政策を打ち出した国に大手企業が殺到し市場が供給過剰に陥っていたこと、そうした過当競争がトップ企業凋落の要因の一つになっていたことなどが明らかとなった。 今後は風力発電など他の再生可能エネルギー産業における相互作用モデルと比較分析していくことで、太陽光発電産業の特徴が浮き彫りになると考えられる。
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