研究実績の概要 |
本研究では、国内の写真ビジネスの存続の理由を解明することが目指された。すなわち、写真の現像・プリントの工程を担ってきたDPEのビジネスが、写真のデジタル化というラディカルな技術変化にもかかわらず非常に粘り強く存続しているという現象に注目して、その適応メカニズムの解明に向けて取り組んだ。 これらの活動から明らかにされた成果は、大まかには下記のように整理される。 まず、兒玉 (2017)では、ラボのビジネスが存続した基本的論理を抽出・整理している。ここからの一つの知見としては、技術変化が発生してから実際に消費者の行動が変化するまでの時間的なラグを利用することで,企業やビジネス・システムが既存能力を活用しながら技術変化や代替という脅威に能動的に対応していくことが可能であるという点である。 さらに、その基本論理を出発点にして、いくつかに問いをブレークダウンして、論点ごとにより詳細な議論を展開した。ここでは、以下の4つを紹介しておきたい。①のちに「解」となるデジタル・ミニラボが何ゆえにタイミング良く登場したのかを明らかにするために、その開発プロセスを明らかにした(兒玉, 2015)。②企業家活動によって業界全体の標準的な「解」が創出されるプロセスを明らかにした(兒玉, 近刊)。③標準的な「解」が共有されたことが、業界全体での「解」の受容を促進したメカニズムを明らかにした(Kodama, 2016b)。④さらに、そうした発見事実を基にして、既存理論の再検討作業を行った(Kodama, 2016a)。 なお、以上の研究成果については、再構成の上、体系的な学術書として出版予定である。
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