研究課題/領域番号 |
25780248
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
永山 晋 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (10639313)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営戦略論 / 社会ネットワーク論 / クリエイティブ産業 / プロジェクト |
研究実績の概要 |
2014年度は、当初の計画通り、前年度までの作業の中心だったデータベース構築をほぼ終え、その次の段階である仮説構築、変数構築、仮説検証、論文執筆の作業を中心に行った。活動の結果得られた主な実績は以下の二つである。 一つは、2014年9月に行われた日本経営学会の年次大会における学会発表である。当該発表は、異なるネットワーク・コミュニティーに埋め込まれたアクター同士が結びつく「ブリッジング」が連鎖的に起こるメカニズムについて、主に社会ネットワーク論の先行研究レビューから仮説構築を行った研究である。 もう一つは、2015年10月にアメリカのデンバーで行われるStrategic Management Societyの年次大会に採択された学会発表用の論文である。本研究は、前年度までに構築した、1967年から2005年までの日本の音楽産業における約2万曲の楽曲データベースを用いて、どのようなチーム構成をもった楽曲制作プロジェクトが高いパフォーマンスを得られるのかについて明らかにしたものである。 その他、まだ研究発表や論文公刊のかたちでの実績には至っていないものの、既に学会誌への投稿を行った研究が二つある。 一つ目の研究は、上記で説明したStrategic Management Societyに投稿した論文について、さらに内容を加えて論文化し、『日本経営学会誌』に投稿した研究である。この研究は、現在、審査プロセスに入った段階である。 もう一つの研究は、日本の音楽産業におけるレコード会社のアライアンス・ポートフォリオとパフォーマンスの関係を統計分析から明らかにした論文である。この研究成果は、『産業経済』に投稿した。本研究も現在審査プロセスに入った段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度の研究活動を通じて達成すべき主な目標は次の三つであった。一つは、前年度で完成しきれなかったデータベースを完成させることである。もう一つは、調査課題についての仮説を構築し、これらを統計的に検証することである。最後は、得られた結果をもとに論文を執筆し、国際学会に投稿することである。 計画していた目標は概ね達成されたと言える。一つ目のデータベース構築については、概ね完成することができた。二つ目の仮説構築、仮説検証作業については、本研究の核をなす部分について行うことができ、興味深い結果を得ることができた。最後の論文執筆については、先の実績にも示した通り、国際学会発表用の論文を作成し、査読審査に通過した。また、その論文の内容を加筆修正し、学会誌への投稿も行った。 特にデータベース構築については進展があった。当初の予定していた1967年から2005年までの日本の音楽産業における約2万の楽曲制作プロジェクトならびに、約1万4千人からなるアーティスト間ネットワークのデータベースに加え、楽曲プロジェクトに関わったプロデューサーやディレクターについてのデータを新たに発見したからである。本年度はさらに研究を進め、データベースの拡張作業も行った。 仮説構築、検証についても、本研究の調査課題の核となる部分を明らかにすることができた。本研究の主な目的は、クリエイティブ産業におけるプロジェクトの業績を高めるチーム構成について明らかにすることである。先行研究とこれまでのインタビュー調査から、アイデアを創出するチームと、創出したアイデアを実現するチームの人数に着目した。そして、アイデア創出はチームサイズが小さいほど、アイデア実現はチームサイズが大きいほどプロジェクトのパフォーマンスが高まるという仮説を構築し、これを統計的に検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の研究活動ならびにそのアウトプットは以下を目標としている。まず、6月までに、新たにデータベースの項目に加える音楽ディレクター、プロデューサーのデータをダブルチェックし、拡張したデータベースを完成させる。そして、8月までには、異なるコミュニティーに埋め込まれたアクター同士が結びつくブリッジングが連鎖的に起こるメカニズムについて、統計的に検証する。9月は、その結果をもとに論文執筆を行い、海外ジャーナルもしくは、日本の学術誌に論文を投稿することを目標とする。また、2014年度に投稿した論文の査読結果がどの時点で判明するかにもよるが、2015年度中の論文公刊を目指す。また、音楽産業以外にも、マンガやテレビなどのクリエイティブ産業関係者へのインタビュー調査も引き続き行っていく。 次に2015年度の研究推進方法を説明する。一つは、新たに加えたデータを使った分析を行う点である。既に言及したが、音楽プロジェクト関わったディレクター、プロデューサーのデータを新たにデータベースに加えることで、当初の計画よりも、より正確な業界のネットワークのつながり方が把握できる。このデータの入力については、既に業者に委託し、作業は完了している。残る作業は、データのチェックのみである。 もう一つは、インフォーマル研究会での発表である。代表者は経営学分野で海外トップジャーナルに掲載した経験をもつ研究者から構成されるインフォーマル研究会の運営を行っている。毎回1人の研究者のみが発表するため、集中して多数のフィードバックが得ることができる。2015年度は、当該研究会でも発表を行い、海外ジャーナルに投稿する論文の水準に質を高めていく。
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