本研究は、台湾系EMS企業を対象に、台湾EMS業界の飛躍的な成長を支えた6社の成長メカニズムを解明する。具体的には、その組織間ネットワークがどのような特性を持っているのか、またどのように能力を構築し、EMS業界の形勢を逆転したのかを明らかにする。 本研究3年目となる平成27年度の計画は、(1)文献サーベイや学会に参加によって、さらなる理論研究の深化を図ること、(2)現地調査、(3)研究報告、(4)論文執筆、を予定していた。その中で、途中計画の発表に関しては、8月に行われた工業経営研究学会の全国大会(明治大学)、9月に行われた経営哲学学会の全国大会(慶應義塾大学)、および3月に行われた経営戦略学会の全国大会(帝京大学)で研究報告をした。 計画していた1)~4)の項目をほぼ計画通りに実施した。当該年度の研究計画における2)事例調査に関しては、台湾と上海の現地企業にヒアリング調査をした。ヒアリング調査の進行は、事前に送付してある質問項目を中心に研究開発、製造工程にかかわっている担当者にヒアリングをする形でおこなった。ヒアリング調査については、EMS企業が中国工場における生産方式の導入、人事制度の特殊性、そして、中国市場の変化に対応して、中国拠点の再編、研究拠点の展開・分業などについて詳しい知見を得ることができた。また、台湾での現地調査については、現EMS業界1位の鴻海社だけではなく、前年度に実施できなかった研究対象の他の4社を訪問し、ヒアリング調査した。台湾におけるエレクトロニクス企業の急成長のプロセスの実態に関して、特に新製品導入の能力と製造能力、クライアントとサプライヤーとの関係性などについてより詳しい知見を得ることができた点は大きな成果となった。 当該年度の研究成果の発信については、学会報告におけるコメントや質問の内容を加味したものをまとめ、経営哲学論集第32集に投稿した。
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