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2014 年度 実施状況報告書

新興国向け製品開発とリバース・イノベーション:白物家電企業の事例研究

研究課題

研究課題/領域番号 25780254
研究機関南山大学

研究代表者

上野 正樹  南山大学, 経営学部, 准教授 (90379462)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードリバース・イノベーション / 家電 / 製品開発 / 新興国 / グローバル経営 / 経営戦略
研究実績の概要

本研究は新興国市場のルームエアコンに焦点をあてている。本年度の研究実績として、日本企業の新興国市場開拓の特徴が「プレミアムゾーン戦略」であることを明らかにした。ボリュームゾーン向けの商品は一部展開しているものの、重点はプレミアムゾーンにあることを確かめた。
昨年度、中国市場とインド市場で販売されているルームエアコンのデータベースを作成した。この分析から日本企業はボリュームゾーンに位置していない可能性がわかった。また、おもに中間層や低所得層向けから生まれるリバース・イノベーションは見られないこともわかった。今年度は、この発見を厳密に調べることにした。まだ流動的な段階にあるインド市場のルームエアコンに焦点をあてることにした。2つの方法を採用した。製品データベースの統計分析、そして現地調査である。
まず、インド市場の製品データベースを再度作った。価格比較サイトからの企業の抽出と、各社のインド公式webサイトをもとに、21社の販売が確認された。このうちインド企業は10社あった。製品性能を考慮した販売価格の分析から、日本企業は相対的に富裕層向けの価格帯に位置していることが確認された。市場シェアで1位のインド企業Voltasと2位の韓国企業LGよりも、日本企業は約20%高い販売価格がついている。インバーター搭載と省エネ性能を重視していた。
次に、インドの3つの都市にインタビュー調査に行き、プレミアムゾーンへの位置取りと理由を確認した。まずインド家電企業のOnidaの会長にインタビューした(ムンバイ)。次に、日立(アフメダバード)とダイキン工業(グルガオン)のインド子会社へ訪問し、インタビューと工場見学(日立のみ)をおこなった。また各都市の家電販売店でも、日本企業のプレミアムゾーン戦略の特徴を聞き取りした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究実績として、日本企業の新興国市場開拓の特徴を発見することができた。従来、学会やマスコミの論調として、ボリュームゾーン市場の攻略が注目されてきた。たとえば先行研究では、新興国市場の中間層に向けた製品開発を分析している。これに対し、本研究対象(インドのルームエアコン)において、日本企業の新興国戦略の現実はボリュームゾーンではなくプレミアムゾーンに重点があることがわかった。現在、インタビュー調査もふまえ、プレミアムゾーン戦略の合理性を考察している。
この発見事実を得るため、製品データベースの構築と統計分析(ヘドニック回帰分析)をおこなった。この成果は、査読の無い大学紀要の論文にまとめている。また、インタビュー調査(インドでの3社への聞き取り)をおこない、各社の事例研究論文の作成に取り掛かっている。最終年度には、インタビュー調査に重点を置き、インドでの現地調査を継続したい。
達成度を「やや遅れている。」とした理由は、査読論文や学会での研究発表がないためである。3ヵ年の研究のうち、2年目には学会発表を予定していた。しかし、これが実行できていない。この遅れの理由は、インドで現地調査をするための協力を得るのに時間がかかったことがある。調査の実現のため、中京大学の教授に協力を依頼した(インドのトヨタ自動車に勤務経験のある教員、およびインドのダイキン工業と連絡のとれる教員)。そして2015年3月にインド現地調査を実施した。最終年度は、学会発表と査読論文に挑戦したい。

今後の研究の推進方策

第一に、学会発表と査読論文として研究の実績を具体化することである。従来、企業や学会ではボリュームゾーン攻略に関心が多かったため、日本企業によるプレミアムゾーン戦略を明らかにした研究はほとんどない。そのため、本研究は一定の学術的貢献が期待できる。
第二に、インド現地調査の継続である。インドのルームエアコン市場において、現地での開発と生産をおこなっている日本企業は3社ある。このうち、2社についてはインタビュー調査をおこなった。最終年度は、まだ調査していない1社を訪問したい。
第三に、製品データベースのアップデートと分析である。時系列の比較ができるようにデータベースの入力を工夫したい。これによって、プレミアムゾーン戦略からの変化の有無、その戦略の特徴(たとえばプレミアムの根拠となる性能差やブランドなどの特定)を明確にする。

次年度使用額が生じた理由

次の2件の研究費の申請が間に合わなかったため、次年度使用額が生じている。2015年3月上旬のインドでの現地調査において、インドの都市間の移動(ムンバイ、アフメダバード、デリー)において航空券代が発生した。次に、インドの都市内での移動(車と運転手のチャーター)の支出が発生した。これらの経費の申請が年度内(2015年3月中旬)に間に合わなかった。実際の使用は年度内に終わっている。

次年度使用額の使用計画

上記の航空券と交通費の使用は年度内に終了し、領収書などの提出は終わっている。このため、特別の使用計画は必要としない。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] インドにおけるエアコン市場の競争と製品戦略:新興国企業の成長とボリュームゾーンへの移動障壁2015

    • 著者名/発表者名
      上野正樹
    • 雑誌名

      南山経営研究

      巻: 29 ページ: 271-285

    • 謝辞記載あり

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公開日: 2016-06-01  

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