本年度は当初の計画にしたがって,二輪車(完成車)メーカーから二輪部品サプライヤーへと本研究の分析対象を拡げること,これまでの研究蓄積を成果としてまとめ,その公表を通じて論点を洗練させることに取り組んだ。この結果,本年度は次の実績をおさめた。 第1に,部品サプライヤーが有する複数の海外生産拠点を中心として,二輪車メーカーの海外生産拠点及びディーラーに対するフィールド調査を実施した。同時に,二次資料・データの収集・整理も継続的に行い,情報を豊富化させた。このことによって,(1)部品サプライヤーの複数の現地生産拠点の発展と,(2)(1)に影響を与えた各国における二輪車メーカーの市場戦略の変化,(3)部品サプライヤーの国際生産分業の形成プロセスと,その形成を支える調整メカニズムを把握できた。これら(1)~(3)を把握するためには,部品サプライヤーが持つ複数の海外生産拠点それぞれの長期的な発展プロセスを分析する必要があった。それゆえ,部品サプライヤー数社に対象を絞り,重点的に検討を加えた。 本研究では,国際生産分業を複数の海外生産拠点と本国生産拠点の緊密な関係から成るシステムと捉え,統合生産システム(本研究課題名の生産システム編成と同じ意味)と呼び,その形成プロセスと機能を完成車メーカーを対象に解明を進めてきた。本年度の研究によって部品サプライヤーをも分析できるようになったことが第1の成果である。 第2に,上記した部品サプライヤーの研究成果の一端を公表した。ただ,部品サプライヤーを対象とした研究蓄積のうち,未だ論文として公表していない成果がある。早急に成文化していきたい。また,本年度は,二輪車メーカーを対象とした研究蓄積をまとまった形で公表することを計画していた。本年度を通じて,調査協力先の事実確認とそれに伴う修正作業を終えたため,今後,博士論文及び書籍として公表していく。
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