研究課題/領域番号 |
25780257
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
横田 明紀 立命館大学, 経営学部, 教授 (30442015)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保守 / 分類 / 大規模情報システム / 事例調査 |
研究実績の概要 |
2013年度での事例調査に基づく個々の保守の作業目的と発生要因の特定を踏まえ,2014年度では特に情報システムのライフサイクルの末期である「改廃」に関する分析を行った。情報システムの開発・導入方法や所有形態,運用方法の多様化にともない本稼働後の保守や運用の重要性が高まるなかで,(1)本稼働後の情報システムのライフサイクルをいかに把握するのか,また,(2)廃棄を検討すべき時期にある情報システムをどのように捉えるのか,について以下の3点を中心に事例調査の更なる精査を進めた。 第1に「負荷の程度」を把握するデータとして,ある調査企業が有する複数の情報システムを対象に,各システムでの保守作業の件数と,各保守作業に要した工数に関する記録を精査し,調査対象システムごとに本稼働後の時間の経過とともに保守の件数や工数の変化を把握・分析した。 第2に「利活用の程度」を把握するデータとして,上記と同様の複数の情報システムを対象に,各システムでのログイン数,ユーザ数,ユーザのログイン時間などに関する履歴を精査し,調査対象システムごとに本稼働後の時間の経過とともにログイン数,ユーザ数,各ユーザのログイン時間の変化を把握・分析した。 第3に,これらの「負荷の程度」と「利活用の程度」を指標として組み合わせ,導入された情報システムが業務の中で有用に利活用されているのか,またそれに対する負担は適切なのかに関する考察を踏まえ,改廃のタイミングを客観的に把握する為のフレームワークの設計を行った。 本研究のテーマである保守の役割と重要度を把握する上で,保守および運用が終了する「改廃」を考察することは不可避である。また,既存研究はいずれも稼働中の情報システムが調査対象となっており,ライフサイクルの末期である「廃棄」までを対象に分析が行われておらず,情報システムのライフサイクルに関する研究においても寄与できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では環境変化に対する保守の役割と重要度を解明することを目的としている。本研究を進める上で最も重要なことは事例調査先の確保である。現在,大手システムインテグレーション企業やコンサルティング企業を中心に,それらの企業が取り扱っている情報システムを中心に事例を収集してきた。しかしながら,大手システムインテグレーション企業やコンサルティング企業が蓄積している保守や運用,およびユーザの利用履歴に関する様々な記録(ログデータ)を得るには,さらに,それらの企業が受託している個々の利用者(ユーザ企業)ともデータの利用に関する合意を得る必要があり,それらの手続きに予定以上に多くの時間が費やされた。またこれらに加え,これまでの調査・分析をまとめるための時間が当初予定していた以上に十分に確保できなかったことにより,研究成果の公表を目的とする学会発表や論文執筆が遅れている。 他方で円滑な研究の遂行が実感できる点としては,一定の制約はあったが,特定の調査企業(コンサルティング企業)からまとまった情報システムの数とそれら個々の情報システムに関する保守およびログイン数,ユーザ数,ユーザのログイン時間などに関するログデータを得られたことである。特に,比較的長期間のこれらのログデータを得られたことで,今後,各情報システムでの本稼働段階における時間の経過を踏まえた保守の変化や重要度の分析に向けて,ある程度の着手できる見込みがついた。 ただし,本研究の客観性と有用性をより向上させ,研究内容を深化していくために,事例の数は可能な限り多い方がよい。したがって,今後も可能な限り調査企業で利活用されている他の情報システムや各種関連協会への支援を依頼することで,一層のデータ収集に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は本研究の最終年度となる。そのため,先の「現在までの達成感」で述べた遅れている学会発表や論文執筆など研究成果のまとめと公表を中心に活動を行いたい。特に国際学会を中心に広く研究発表を行い,研究者間での意見・情報交換を加え,研究成果に対する学術的な質の充足を図る。また,論文執筆により広く研究成果の公開を図るとともに,3ヶ年の研究成果報告書を作成し,本研究の総括を行うことを計画している。 さらに,技術的要因や経営活動をとりまく急激な環境変化に迅速に対応するために,旧来からの受託開発だけではなく,1990年代以降に広まった統合基幹業務システム(ERP: Enterprise Resource Planning)のようなパッケージベースでのシステム導入や,特に東日本大震災以降に大きく着目されるようになったクラウドコンピューティング,およびあえて開発や導入に完了期限を設けず,稼働後も開発し続ける運用方法など,多様な情報システムの開発や導入および所有や運用の形態が出現している。こうした開発や導入および所有や運用の形態の変化の傾向として,昨今,システムの開発や導入に要する期間が短期化しつつある反面,その後,いかに情報システムを実業務の中で適切に利活用していくのかを中心とした長期の保守や運用への関心,もしくはその重要性の認知が広まりつつある。そうしたなかで,情報システムのライフサイクルにおいて,特に本稼働後の期間での様々な変化の特徴を捉えること,およびライフサイクルの末期である「改廃」までを網羅した分析と改廃を検討すべき時期にある情報システムをどのように客観的に捉えることが可能であるのかについては,これまでの研究の更なる発展とともに,本研究の意義をより高める上でも研究目的の1つとして捉え,将来的にも積極的に取り組む価値があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成感」で述べたように,研究成果の公表を目的とする学会発表や論文執筆が遅れていることが予定していた旅費での予算で多額の残額が生じる要因となった。当初,2014年度は国際学会を中心に広く研究成果の公表を目的とした研究発表を行い,研究者間での意見・情報交換を加え,研究成果に対する学術的な質の充足を図ることを計画していた。また,業務分析や業務モデリング手法に関する研究を中心に助言を得ている豪州メルボルン大学での研究打合せを予定していたが,進捗状況がやや遅れていたこともあり,当面の打合せにはインターネットによる会議システムを活用して済ませた。こうしたことから旅費の予算の消化ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
「現在までの達成感」や「今後の研究の推進方策など」にも記載の通り,2015年度は論文執筆により広く研究成果の公開を図ることを予定している。特に,2014年度に旅費での予算に残額が生じる要因となった豪州メルボルン大学での研究打合せや,国内外での研究報告・発表を可能な限り早期に実施し,研究者間での意見・情報交換を加え,研究成果のまとめを行う上での学術的な質の充足を図る。 また,昨年度からの調査を引き続き本年度でも調査企業で利活用されている他の情報システムからのデータ収集や,各種関連協会への支援を依頼することで新たな事例データの拡充に努める。
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