2016年度は、2015年度の成果を受けて研究を行った。具体的には、主に研究論文の執筆を中心に実施することになった。また国際会議への参加などにより専門家との議論や本研究と関連する研究報告の聴講なども行うことができた。本年度の研究は特にこれまでの研究の整理と研究論文の執筆ということができるが、そこでは破壊的リーダーシップ(destructive leadership)研究において、さまざまな社会科学のパラダイムないし理論的パースペクティブを用いた研究の必要性を指摘できることがわかった。たとえば破壊的リーダーシップ研究と関連する侮辱的管理(abusive supervision)に関する研究では、質問紙を用いた定量的研究が多くの研究蓄積を生むことで研究の進展を促してきた。しかし一方で、このような現象に関する詳細な記述が比較的限られていることから、研究者が意図した以外の本現象の組織における多様な意味が捨象されていることも考えられる。たとえば上述の研究群の多くは、侮辱的管理を個人レベルの概念として捉え、リーダーとフォロワーの対人関係の問題として分析を行っているものが少なくない。この点は、破壊的リーダーシップや侮辱的管理を個人レベルの対人関係という関係性に閉じず、本現象の組織的影響について把握する必要性を示唆しているといえ、本現象の組織における意味や影響を考察するための研究アプローチが求められていると考えられる。
|