研究課題/領域番号 |
25780262
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
宮本 琢也 久留米大学, 商学部, 准教授 (70549683)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営学 / 中小企業経営 / オープン化 / 地域ビジネス |
研究概要 |
電子市場を中心とした市場取引によるオープンイノベーション(以下:OI)と、企業連携によるOIについての調査を行った。前者は不特定多数の取引を想定しており、後者は特定の企業同士の連携を想定している。後者については、デザイナーとの連携によって新商品を作り出している燕市の研磨業についての事例分析を行った。これについては『久留米大学商学研究』によって成果を公開している。 そして、市場取引については、検索サイトを通しての受注の際に、一度に多数の工程を引き受けることでより付加価値の高い受注を行っている筑紫野市の三松についての調査を行っている。三松は、溶接から塗装にいたるまで多数の工程を担当できる総合力のある中小企業であり、その総合力をいかして、溶接の受注を受けた場合、そのまま組立作業や塗装作業も担当することでメーカー側(発注側)の手間を省けるという提案をして、単工程ではなく多工程の受注を狙う営業をしている。このような営業活動を電子市場での取引においても反映するために、多数の工程のうちどこか一か所でも顧客に注目されるようなプロモーションを行っている。 その他、GTスパイラル、SPGテクノ、熊紡メタル、エルム、アラタナ、金剛などの事例調査を行うとともに、NCネットワークの事業の変遷やサービスの変化についても調査は進めている。これらを踏まえ、まったく同じ企業であっても、電子市場経由での取引と、企業間連携での取引では受発注の内容が異なることが分かった。 また、当初計画以上の成果として、そもそものオープンイノベーションは過去にはどのような形で行われてきたのかという歴史的な分析も行い成果報告を行った。さらに、試験的に、オープンイノベーションが最も問われる技術転換期についての調査も行い成果報告を行い、これによって概念的な整理が進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究でも、アウトバウンド型のOIの事例が少ないと指摘されてきた。そのなかで、研磨技術がデザイナーから注目されて連携に至る事例などの多数の事例抽出にいたった点は当初の計画以上の成果と考えられる。その一方で、インバウンド型については、中小企業が「待つ営業」をすることが多いという事情もあり、これに関する調査は当初予定よりは時間がかかっているものの、一定の成果も出ている。例えば、当該年度の調査で明らかになった、三松が音響工学の分野で大学と連携しながらiPhoneケースを作成した事例や、エルムが大手電機メーカーでは取り組まなかった太陽の色に近いLED電球の開発を、エンジニアを中途採用することで開発に至った事例などはこれに該当する。いずれにせよ今後は、事例を積み重ねつつ、比較し、考察する必要があるが、データの収集そのものは順調に進んでいるという点から、上記の判断となった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、当初計画にあった通り、企業連携についてはアマテラスなどの事例があり、また、九州地域内でも企業連携のモデルとなった事例が多数あるため、これらにアクセスしたい。さらに、中小企業が自らにない技術を取り込むための産学連携などの事例を調査予定である。これは昨年度の三松の事例分析の延長線上のものを含めて数例の事例を調査する。これらの点は、経営資源・技術・情報などを他社と補完しあいながら、自社単独ではできなかったことを行っている事例についての調査を行うという狙いがある。 次に、昨年度よりデータを収集してきた電子市場による市場取引のケースと、企業連携のケースの比較分析などを行う予定である。 また、①これらの事例が単なる日本の特殊な環境下において成立するものか、あるいはもっと普遍的なものなのかを確認する、②最新のOI研究の動向を確認する、という2つの目的で、海外学会での情報収集を行いたい。例えば、エクセター大学のBessant教授らが推進する「Innovation Lab」においても、クローズドイノベーションとオープンイノベーションについての調査を行っているが、そのBessant教授が出席予定で、プログラムにもオープンイノベーションやサプライチェーン関連の議論もあるヨーロッパ経営学会などへの参加を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では、東京へのインタビュー調査を予定していたが、担当の方の海外視察がたて込んでいたため、アポイントメントが次年度となったことが原因である。 おおよそ当該旅費相当の金額を次年度へ持ち越す残高となっている。 平成26年度中に、平成25年度にできなかった分のインタビュー調査を行う予定である。そのため、平成26年度の研究計画には大きな変更はなく、平成25年度に事情によりできなかったインタビュー調査を平成26年度に追加的に行うことで対応できる。
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