本研究は、中小企業においてオープンイノベーションを実現する手段とマネジメントに関する研究である。 当該年度においては、自社ブランドの完成品を手掛けている企業として、九州の中小企業および高岡市の鋳物メーカーを中心に調査を行ってきた。それぞれ、海外からも注目されている完成品を手掛けているという共通点がある。 東急ハンズでも扱われている雑貨から海外の公共事業でも使われる機械部品にいたるまで、幅広くオープンな取引をしている九州のA社は、その手段として主に福岡市内のデザイナーとの連携を重視していることが分かった。同様に、高岡市の鋳物メーカーのB社も、東京の複数のデザイナーとの広域連携に積極的である。 その結果、まず、本研究のテーマの1つであったオープンイノベーションを実現する手段については、市場取引のほか、デザイナーとの連携の有効性を確認できた。 次に、マネジメントについては、これまで一定程度の研究が進められてきたNCネットワークのような電子市場を使った企業間マッチングの場合、特定分野にしぼった高度な技術や特殊な技術で注目を集め、取引につながるケースが見受けられてきた。一方で、デザイナーとの連携の場合、企業側の総合力が問われることが多い。デザイナー自らが多数の企業と連携しながらデザインを形にするのではなく、依頼を受けた企業側がワンストップで引き受けて対処できる体制が必要となる。上記のA社は、切削からプレス、溶接、塗装に至るまで自社内に多くの工程を持つことで、あらゆる要求に応えている。B社も、A社と類似する特徴があった。 上記の企業以外にも多くの企業を調査したが、市場取引以外の手段として、デザイナーとの連携という1つの手段が発見できた。また、マネジメントについては、前者の場合は技術の特殊性を向上させていく必要があり、後者の場合はワンストップで対応できる総合力が重要だと分かった。
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