平成27年度は国際学会における報告において、日本企業の国際的な競争優位の源泉としてトランスナショナル化に着目し、既存研究では不十分だった(1)新興国の市場・拠点でのイノベーションの発現、(2)そのグローバルな組織における共有経路・形態を検討した。新興国におけるオートバイ産業の位置づけの大きさ、そうした産業におけるホンダなど日本企業のプレゼンスの大きさを鑑みると、本研究が明らかにした日本企業の企業行動とそこから示される新興国市場の特徴とイノベーションの発現のありようは新興国経済や企業のグローバル経営に重要な示唆を与えたと考えている。ただし、こうしたイノベーションがどのような組織構造でどのような戦略形成プロセスを通じて発現されるのか、という点については必ずしも明確ではなく、今後の研究課題として残された。 また、多国籍企業学会における報告において、上記の検討を可能にしたフィールドワークのありようとその企業行動や国際経営へのインプリケーションを示すことができた。この報告は本研究が平成25年度、平成26年度にインド、バングラデシュ、ミャンマーで行った徹底的な現地調査が基礎となった。 さらに、こうした学術的成果を国際協力事業団の産業政策立案能力向上(Training for Industrial Promotion and Industrial Policy)プロジェクトにおいてバングラデシュの政府関係者や企業関係者に対して研修を行うことを通じて社会還元を果たすこともできた。あわせて、上記成果とそこでの議論を踏まえて、英語論文を現在執筆中である。
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