2000年代から始まったNPM(New Public Management)のブームにより,多くの自治体では行政評価と呼ばれる成果評価制度が導入されてきた。しかし,成果評価制度を日本の自治体において先駆けて導入していた三重県庁の前職員である村林(2004)は,行政評価導入以降、業務遂行の個人化が進み,人材育成,チェック機能が低下していると指摘している。このことは、成果評価制度の導入によって,職員個人の目標達成や成果が最も重視されるようになり,職場での職員同士の協力体制が弱体化していることを意味する。そのため、現在、多くの自治体組織では、行政職員の協力行動をいかに引き出すかのが大きな課題の一つとなっている。 そこで本研究では,成果評価制度が,組織機能の低下をもたらす原因の一つとして,課レベルにおける相互依存性が,個人レベルにおける「対人的促進」と呼ばれる他者への自発的配慮行動に及ぼす影響に着目し,同影響の存在を計量的に評価している。そのため、本研究では、多層レベルにおける課業相互依存に焦点を当て、多層同時比較調査を遂行し、マルチレベル分析を用いて、課業相互依存が行政職員の協力行動に及ぼす影響を明らかにしてきた。具体的には、業務相互依存性と目標相互依存性の高い部署に所属すると,個人の対人的促進が高まることが明らかになった。このことから,職員間の協力行動を高めるには,職員個々人に対するアプローチのみならず,所属単位における高い相互依存性を作る職務設計へのアプローチの重要性が示唆された。
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