研究課題/領域番号 |
25780267
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
勝又 壮太郎 長崎大学, 経済学部, 准教授 (80613588)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 顧客関係管理 / 消費者行動研究 / 選択集合 |
研究概要 |
本年度は、以下に述べる2つの観点から研究を遂行した。第1は、消費者の選好形成における競合ブランドとの影響関係を考察し、顧客対応への活用を議論する研究である。第2は、顧客関係管理の新しい戦略の1つとして期待される、ロイヤルティプログラム(LP)のポイント交換と経営効果について考察した研究である。 第1の研究は、消費者の選択問題を理論的背景としている。消費者のブランド選択においては、選択の候補となるブランドの集合が形成され(選択集合)、この集合内のブランドの相対評価によって最終的に選択されるブランドが決定する。ここで、本研究では、選択集合の構造そのものがブランドの評価に与える影響を実証的に考察した。消費財を対象とした実証分析から、競合に対する脆弱性がブランドによって異なることが明らかになった。また、消費者間でも競争環境に対する反応の異質性を明らかにすることができた。これらの成果から、ブランド・消費者個別の対応への示唆を得ることができる。 第2の研究は、LPの設計に関する議論が背景にある。現在、業界を問わず多くの企業がLPを導入しており、積極的な顧客の獲得と囲い込みが試みられている。多くのLPは顧客の購買額に応じてポイントを付与しており、購買額が多い顧客がより良いサービスを受けることができることになる。しかしながら、あまりに多くのLPが導入されている現在、もはやLPを導入しただけでは競合に対する優位性を獲得することはできず、LPそのものの差別化が求められている。その中で、新しいLP差別化施策の1つとして、付与されたポイントの交換という戦略が見られるようになっている。本研究では、このポイント交換がもたらす経営成果を検討した。実証分析の結果として、ポイント交換の提携関係は経営成果に正の効果を与えることが明らかになり、LPの新しい戦略の1つとしての有効性が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は、全体として計画通りに進行しているといえる。 第1の研究、消費者の選好形成における競合ブランドの影響を考察した研究について、本年度は、消費者を対象とした調査を行い、調査結果を統計的な手法によって分析し、学会発表を中心として成果を公開している。これまでに、消費者の選択行動に与える競合ブランドの影響は実証的に確認され、その一般的傾向を考察することはできたが、顧客関係管理への活用については検討不足である。研究計画期間は2年間であり、当初の研究計画においては、具体的な経営施策の検討は2年目の計画であるため、現在までの達成状況としては、問題はないといえる。 第2の研究、ポイント交換の提携関係の経営的成果に関する研究においては、ポイント交換情報サイトの管理を行っている企業との意見交換を通じて、業界傾向の分析を行っている。また、ポイント交換情報サイトの会員を対象としてアンケート調査を行っており、このアンケート情報と会員情報を合わせて統計分析を行っている。成果の一部は学会を通じて発表している。この研究も、研究計画2年間のうち、初年度はデータの収集と解析を目標としていたため、当初の計画と比較して遅滞はない。 研究の総括として、これらの研究を統合的に議論する枠組みの構築を目標としているが、これは2年目の研究計画である。現時点の進捗として、次年度は、統合枠組みの検討に入ることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画を、それぞれの研究について述べる。 まず、第1の、消費者の選択集合に関する研究において、次年度は国際学会への発表を計画している。国際学会で得られたコメントをもとに研究の改善を行い、論文の投稿を計画している。本研究の推進にあたっては、近接分野の研究者との意見交換を行いながら、一部は共同研究として進めている。とくに市場競争構造分析や消費者のカテゴライゼーションに関する研究が重要な理論的な背景となるため、これらの分野を専門とする研究者との連携を図り、研究を進めていく計画である。 第2の、ロイヤルティプログラムの交換に関する研究については、本年度の成果を論文にまとめ、次年度は新しい観点から研究を行っていく計画である。本年度はとくに企業の経営成果に与える影響を考察したが、次年度は消費者の交換行動に着目した研究を進めていく。本年度にパイロット調査を実施しており、これをもとに調査計画を策定し、実査を行っていく。前期に調査を実施し、後期に分析を行い、研究をまとめていく計画である。この研究も、近接分野の研究者と意見交換を行い、一部は共同研究として進めている。この研究は、戦略的提携や組織間関係論に関する研究が理論的な背景として必要になるため、この分野を専門とする研究者と連携しながら研究を進めていく。 また、研究の達成度においても述べたように、2年目には、研究1と2を統合した枠組みについても議論し、顧客関係管理における新しい戦略的示唆を示していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた物品(計算機)の購入額の縮減があり、次年度への繰越が発生した。 次年度の調査範囲を拡張し、その調査費用に使用する計画である。これにより、当初計画よりも進展した成果が期待できる。
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