研究課題/領域番号 |
25780268
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
原田 将 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (20387517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グローバル・ブランド管理 / 国際マーケティング / 慣性 / ダイナミック・ケイパビリティ |
研究概要 |
本研究の目的は、グローバル・ブランド管理における海外子会社の役割を明らかにすることである。特に、海外子会社の役割が受動的役割から主体的役割へと変化する経緯とその要因、そして主体的役割の特徴などについて明らかにする。平成25年-28年度の4年間で、グローバル・ブランド管理を実施している本社担当者と海外子会社担当者の双方に調査を実施し、グローバル・ブランド管理における海外子会社の役割の変化について明らかにする。平成25年度は、文献調査やインタビュー調査を通じて、本研究の分析枠組みを作ることであった。 本年度の研究成果は、海外子会社の役割とグローバル・ブランド管理における慣性の関係を示した点である。グローバル・ブランド管理は、その統合性の必要性から、戦略や組織の硬直化問題、すなわちグローバル・ブランド管理の慣性問題がある。そしてこの慣性には、正と負の両方の効果がある。戦略のブランド・アイデンティティからの逸脱を防ぎ、効率的な管理を実現するという正の効果と環境変化に適応できないという負の効果である。研究の結果、グローバル・ブランド管理の慣性は、海外子会社の役割が限定的である場合に発生するという仮説が提示された。 本研究の成果は、近年、注目を集めるダイナミック・ケイパビリティ論などに対して、インプリケーションを与えると考えている。国際マーケティング研究やグローバル・ブランド管理研究においても、能力の再構築がキーワードとして指摘されている。しかしながら、グローバル・ブランド管理において慣性が発生することを考えれば、そうした動態的変化は容易ではない。今後は、慣性を視軸に、動態的変化が実現されている場合における海外子会社の役割についても検討する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、グローバル・ブランド管理における海外子会社の役割を、主体的役割と受動的役割に分け、その内容や条件について検討することであった。本年度の目的は、そのための分析枠組みの設定であった。 研究の結果、慣性概念がこの問題のキーワードになることを示した。すなわち、海外子会社の役割が主体的役割の場合、慣性を破壊しやすく、受動的役割の場合、慣性を発生しやすい(または強化しやすい)、ということである。これは、未だ仮説に留まるが、こうした鍵となる概念を設定できたので、本研究は、おおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
対象の複雑性に起因するインタビュー調査におけるアクセスの困難性が存在する。また、慣性の負の問題について研究する場合、対象へのアクセスはますます困難になる。この問題をクリアするために、実務家の集まる研究会に出席し、人的コネクションを一層強固にする必要がある。私は、約1000名の国際マーケティング担当者が会員になっているグローバル・マーケティング研究会(代表者:明治大学大石芳裕教授)の会員であるため、同研究会を利用した人的ネットワークの構築が可能である。また、本年度から同研究会の関西部会が設立された。そうした実務家のあつまる研究会に積極的に参加し、研究協力をお願いしたいと考えている。
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