研究課題/領域番号 |
25780270
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鄭 潤チョル 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (10439218)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 商業学 / マーケティング経済学 / 応用ミクロ経済学 / ビジネスエコノミクス |
研究実績の概要 |
平成27年度には最新の研究動向と実績を幅広くリサーチしながら、「価格差別戦略」に関するモデル分析を行った。私が共著で2009年にJournal of Economics誌に掲載した論文においては、もし将来に価格差別を実施しないことを企業が確約できれば、単一価格戦略が企業によって選ばれる均衡が存在することが証明された。さらに、今年度にWestern Economic Association Internationalの国際学会にて発表した論文においては、企業の利潤をより大きくする均衡の条件を分けることができた。すなわち、単一価格戦略が企業にとって有利な均衡と差別価格戦略がより有利な均衡のふたつが存在することを証明し、各々の均衡は消費者の将来に対する合理性の有無に依存することを明らかにした。例えば、消費者が将来を合理的に考慮に入れて現在の購買行動を選択するモデルにおいては単一価格戦略が企業にとって有利になる。その反面、消費者が将来を考慮に入れずに行動する場合には、価格差別戦略のほうが企業により大きな利益をもたらす。この後者の結果は、私が知る限りに、既存研究においては説明されたことのない新しい結果である。つまり、価格差別戦略が複占市場において実施される場合には企業にとって不利な結果をもたらすといった多くの既存研究の結果を私は再考察し、消費者行動の属性においては既存研究とは異なる結果、すなわち、価格差別戦略が企業にとって有利な場合も存在することを明らかにしたことによって、なぜ現実にはこれほど多くの企業が購買履歴に応じた価格差別戦略を実施しているのかを説明することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の研究期間のうち3年目である今年度における本研究の位置付けは、購買履歴に応じる価格差別戦略が選ばれる均衡と企業利潤に与える影響を独自なモデルで説明することである。今年度には企業の戦略と消費者行動を両方考慮することによって得られた結果を国際学会にて報告することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は現在に得られた結果をさらに分析し、国際雑誌に掲載することを目指して投稿していく。さらに、実態調査を通じて消費メカニズムの実態を分析、抽象化して、それを反映した新しいモデルによる論文を執筆し、学会等で発表していく。特に、消費者の購買履歴に応じた価格差別戦略が消費者のブランド・ロイヤルティーにどう影響されるのか、あるいは影響を与えるのかに関する因果関係を深層的に分析していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額の3181円が残っており、単独で執行できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品等に合算して使用する予定。
|