研究課題/領域番号 |
25780272
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
金城 敬太 沖縄国際大学, 経済学部, 講師 (20611750)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 事例ベース意志決定理論 / 事例ベース意志決定の問題の理論研究 / 外部性 / 状態依存 / 調査の実施 / アブダクション / システム開発 |
研究概要 |
本研究は,事例ベースの意志決定をもとにした消費者モデリングを通じて新たな消費者行動のモデル開発を行い,マーケティングなどへの知見をもたらすことを目的としている.計画は大きく分けて理論研究(研究実施計画書における(1)),実証と応用(計画書における(2)~(4)),システムの作成(計画書における(5))で構成されている.本年度の成果は,理論研究においては下記の1(および2),実証においては2,3,システムの開発では4の合計4点でとなっている. 1.事例ベース意志決定など距離を用いる方法の理論研究を行った.結果として距離に基づくとき意志決定では属性が多数ある場合,混乱が生じる可能性があることが明らかとなった. 2.理論・実証研究において仮説を豊富化させるための意志決定の研究を行った.事例ベース意志決定モデルが想定しているのは過去の行為や過去に購入した製品属性などの影響(状態依存)である.これに加え過去における他者の行動の影響(外部性)に関する研究を行い事例ベース意志決定との違いを考察にした.さらに意志決定の方法はそのひとの知識や状況に応じて変化する.その例としてモバイルに関する行動の分析を行った. 3.実証を行うための調査を実施し,記述統計レベルの分析を行った.事例ベース意志決定の事例として時系列的であり,また不確実性が伴うような事例としてテレビ番組の選択に関する調査を行った. 4.事例ベースの意志決定を仮定した消費者やマーケティングの意志決定支援システムの開発を行った.まず,事例ベース意志決定と同様に類似性を用いる推論形式を調べた.次に事例ベース意志決定を発想推論という枠組みでとらえ,そのシステムを考案し,シミュレーションデータでの検証を行い成功した. 1,2,4,に関しては対外的な発表をし,また査読付きの論文誌もしくは査読つきの国際会議に投稿している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,初年度は主に理論と実証のための準備を行う計画であった.具体的にはモデル構築・シミュレーションによる提案手法の理論的妥当性の検証(計画書における(1)),調査データに基づいたモデルの妥当性の検証(計画書における(2))の前半部分である調査設計を行う計画であった. これに対して,本年度は,まず理論的な研究に関して進展があった(計画書の(1)).具体的には距離を用いた意志決定における問題点として属性が過剰に増えたときは識別が困難になることが明らかになった.さらに,状態依存との関連を明らかにしている.これらの成果については査読付きの論文誌に登録しているほか,国際会議での発表も行う.また,特に状態依存に関する研究の成果については現在論文誌に投稿中である.以上のように理論的な考察については大きな進展があった. 次に,調査計画のみならず調査を実施したことがあげられる(計画書の(2)~(4)).調査の設計や試作が予想以上に早かったため予算の前倒しを行ってデータの分析を行った.ただし,調査したデータを分析するという点については来年度実施予定である.このように現在分析途中ではあるが,当初の予定を1年前倒しし,調査を行うことができた. さらに,最終年度で開発を行う予定であった事例ベース意志決定を用いたマーケティングに関連するシステムの開発(計画書の(5))について前倒しで行った.具体的にはアブダクションという推論の枠組みとの関連が明らかになったことで,意志決定を用いたシステムの開発を行い,簡単な実験をするところまで行った.このように最終年度で取り組む予定であった一部をすでに行っており完成に向けて大きな前進があった. 以上の3点を鑑み,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は実証研究の続きおよび,応用の検討,さらにシステム化に向けた検討を行う.その上でその成果の取りまとめや公表を行う. 研究については,まず,第一に得られたデータをもとに分析をすすめることを考えている.特に事例ベース意志決定モデルを用いた統計モデルに対して分析を行う(計画書の(2)~(3)).さらに決定モデルを用いたマーケティングへの応用についても検証する(計画書の(4)).具体的には,広告や価格戦略などを行った場合など様々な状況下におけるシミュレーションを実施してその結果を考察する予定である. 次に,システムの検証についても実データを用いて検証することを想定している(計画書の(5)).具体的には調査で得られたデータに対して分析をすすめることを考えている. それぞれ学会発表を行い,さらに論文として査読付きの学会に投稿する予定である.また,Webなどを通じて研究成果の発表おこなう.最終的には,これらの成果を取りまとめた報告書を作成する予定となっている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,次年度に行う予定であった調査を前倒しし,当該年度に行うことになった.その調査費用が予定よりも安くで済んだほか,旅費を抑えたために差額が生じている.この費用は査読に出している論文が返ってきた場合の修正後の英文校正の費用が生じるリスクに対応したものとなっている. 今後は,昨年から投稿している論文の査読などにあてる.また,次年度においては実データの購入や調査を追加的に行う際に利用する.さらに特に成果の発表のために国内外の出張を予定しておりそのために旅費を多くとっているため,これにあてる予定である.
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