研究課題/領域番号 |
25780275
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
外川 拓 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (10636848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情報探索活動量 / 情報過負荷 / 消費者の混乱 |
研究概要 |
平成25年度は2つの課題に取り組むことを予定していた。 1つ目は、「既存研究による知見の把握と体系的整理」である。ここでの目的は、情報探索行動について既存研究でいかなる知見が見出されており、また今後いかなる課題が残されているかを把握すること、および本研究の位置づけや遂行方法を明確化することであった。そこで、「情報探索活動量」をキーワードとして用い、既存研究の検索ならびにレビューを行った。その結果、情報探索活動量に関する研究は、主に1980年代に最も盛んに取り組まれ(例えば、Bloch, Sherrell, and Ridgway 1986; Punj 1987)、その多くが「情報探索活動量が多いほど購買後満足度が高まる」という知見を導出していることが分かった。一方、近年行われた研究は、従来の研究ほど多くは見当たらなかった。さらに関連諸領域の既存研究をレビューしたところ、近年は情報探索活動量そのものより、情報探索の結果として生じる消費者の「情報過負荷」や「混乱」といった現象を対象とした研究が盛んに取り組まれていることが分かった。 2つ目は、「情報探索活動量が購買後の満足度に及ぼす影響の解明」である。ここでは、情報探索活動量と購買後満足度との関係について解明するため、実験室実験の実施を予定していた。ところが、前述の通り、これらの要因の関係性については既存研究で既に明らかにされていることがレビューにより明らかになったため、また「情報探索活動量」というよりむしろ「情報過負荷」状態に置かれた消費者の意思決定や判断へと既存研究の研究関心がシフトしていることが分かったため、本実験については目的と方法論を大幅に見直し、必要があれば来年度に改めて実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度における1つ目の課題である「既存研究による知見の把握と体系的整理」については、自身の研究環境を活用し、効果的かつ効率的に遂行することができた。論文検索システムを用いて、情報探索活動量に関する研究を系統的に検索し、レビューすることにより、既存研究でいかなる知見が得られており、また研究関心や潮流がいかなる変化を示しているかについて、体系的に把握することができた。具体的には、近年、情報探索活動量そのものを扱った研究は少なくなっており、その一方で、情報探索の結果として生じる消費者の「情報過負荷」や「混乱」といった現象を対象とした研究が盛んに取り組まれていることが分かった。 平成25年度には「情報探索活動量が購買後の満足度に及ぼす影響の解明」についても取り組む予定であったが、上記のレビューの結果、この課題については多くの既存研究が統一的な知見を提示しており、近年では、研究関心もシフトしつつあることが明らかになったため、具体的な実験の実施には進まなかった。ただし、平成25年度の主たる目標は、既存研究の知見を整理し、本研究の理論的位置づけを明確化することにあったため、その意味において、最低限行わなければならない課題は遂行できたと考えている。 以上の理由から、本研究課題の進捗状況について「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、事前知識量の少ない消費者による購買直前の急激な情報探索が、購買後満足度に及ぼす影響を解明する予定である。ここでの目的は、購買検討時に当該製品カテゴリーに関してほとんど情報探索を行わなかった消費者が、購買直前になり様々なメディアに接触し、大量の情報を取得した場合、購買後の満足度にどのような影響が見られるかについて仮説を設定し、検証することである。 基本的な関心や研究計画は現時点でも変わらないものの、既存研究のレビューを行っていくなかで、実験遂行上の課題もいくつか特定された。まず、実験において「急激な情報探索」を被験者にどのように行ってもらうかが課題となる。本年度に行ったレビューの結果、「急激な情報探索」という状況自体、消費者行動研究において積極的に扱われてきたものではないことが分かったため、認知科学をはじめとした関連分野の既存研究もレビュー対象とし、製品に関する知識水準の低い被験者が急激に豊富な情報を取得する状況を作り出していきたい。 また、本研究では、知識水準の低い消費者がにわかに豊富な情報を取得した際、消費者が混乱状態に置かれることを想定しているため、実験において、いかにして混乱状態の程度を定量的に測定するかが課題となる。情報過負荷や混乱に関して既存研究をレビューしたところ、消費者の混乱状態を測定する尺度は、いくつかの研究により開発されていることが分かった。例えば、Walsh et al.(2007)は混乱を発生させる情報の特性として、「情報の類似性」(similarity)、「過負荷」(overload)、「曖昧性」(ambiguity)を挙げ、尺度開発を試みている。現時点では、次年度実施予定の実験においては、この尺度を用いることを考えているが、既存研究レビューを継続していく中で、さらに適切な尺度が見つかった際には、改めて検討しなおすことも考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度予定していた「情報探索活動量が購買後の満足度に及ぼす影響の解明」では、情報探索活動量と購買後満足度との関係について解明するため、実験室実験の実施を予定していた。ところが、これらの要因の関係性については既存研究で既に明らかにされていることが、当該年度実施したレビューにより明らかになったため、また「情報探索活動量」というよりむしろ「情報過負荷」状態に置かれた消費者の意思決定や判断へと既存研究の研究関心がシフトしていることが分かったため、当該年度に予定していた実験の実施には進まなかった。結果、当該年度支出額は当初の予定より少なくなった。 来年度は、事前知識量の少ない消費者による購買直前の急激な情報探索が、購買後満足度に及ぼす影響を解明する予定である。その際、実験において「急激な情報探索」を被験者にどのようにして行ってもらうかが課題となる。本年度に行ったレビューの結果、「急激な情報探索」という状況自体、消費者行動研究において積極的に扱われてこなかったことが分かったため、消費者行動研究のみならず、認知科学をはじめとした関連分野の既存研究までレビュー対象を拡張し、急激な情報探索という状況を作り出す方法について検討したい。そのため、当該年度余剰額を用い、関連分野の既存研究(書籍)を購入する予定である。 また、これと関連し、情報探索活動量の把握を目的とし、アイトラッキング調査を行う必要が生じる可能性があるため、その場合には、当該年度余剰額をアイトラッカーのレンタル費用に充当する予定である。
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