研究課題/領域番号 |
25780277
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
左 毅 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, PD (70633684)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サービスターゲティングの明確化 / 販売促進効果の最大化 / 店舗レイアウトの最適化 / 国際研究者交流(オーストリア) / 国際情報交換(アメリカ) |
研究概要 |
平成25年度(1年目)では,先行研究をもとに理論的な調査と検討を進めるとともに,ベイジアンネットワークを消費者動線に関するRFIDデータの解析に適用し,この技術的な課題を明らかにした.申請時の計画内容がほぼ達成できたが,ジャーナル論文の研究成果公表は遅れることになった. 1.データの統一・整形:前処理で膨大,複雑かつ非定型なRFIDデータからノイズ除去・エラークリーニングなどを行い,そのRFIDデータを各売場の滞在時間へ変換してから,消費者属性データ及び購買履歴のPOSデータとも関連させた. 2.滞在時間の離散化:2つの方法で比較と評価を行った.1つ目は,K-means法で従来の伝統的な3分類に分けたことに対して,2つ目は,離散化のクラスター数をBICの評価基準をもとに離散の最適化を行った.改良法では,適切な離散化をすることにより,予測の精度が改善できた.さらに,非専門家や実務家にとって,解析技術者のノウハウをベースに同じツールを使って同じレベルの結果を得ることが可能になった. 3.購買に至る意思決定過程の解明:本研究では,従来研究と先行研究を統合することを目的とした.目的変数は購買行動として,属性データの年齢,POSデータの購買履歴とRFIDデータの滞在時間を説明変数として,購買に至る意思決定過程をベイジアンネットワークで解釈している.更に,従来の決定論に比べ,滞在時間経過に伴って商品購入に至るまで確率論で定量的に分析・評価できた.提案手法は,既存予測手法(ロジスティック回帰,決定木など)より十分な精度が予測できているとともに,時間経過に伴って消費者の購入確率が単調増加ではない(つまり,滞在時間と購入確率の間は非線形関係である)ことをも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,消費者がある売場の滞在時間経過によって,その売場に商品の購入に至る意思決定過程を定量的に分析することを目的としている. 1.提案手法は既存予測手法(線形判別,ロジスティック回帰)より良い精度が予測できた. 2.滞在時間に伴って消費者の購入確率が単調増加ではないことを明らかにした. 3.買い手側の視点から非購入状態から購入状態に至る特徴抽出を示した. しかし,これまでの研究結果より,出入口とレジにつながる売場及び訪問率が低い売場において,ノイズデータがよく見られた.提案手法は十分な予測精度を得るため,データクリーニングにかなり工夫が必要となる.申請時の計画内容より,ジャーナル論文の研究成果公表は遅れることになった.
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今後の研究の推進方策 |
解析技術者にとって,実問題の業務プロセスはどのようになっているかが明らかでない場合,モデル化はどのように行うべきか確立しにくい.したがって,今後の研究方針としてこれまでの理論的な研究成果をモデル化し,実装したい.特に,売場ごとに変数の選択・評価及び離散化について,ベイジアンネットワークの構造探索をも含めた解析自動化を可能とすることで,これからの仮説提示と店舗検証の結果を迅速に対応できる.また,店舗実証のフィードバックによって再学習させる繰り返しの検証過程の効率化・体系化を目指している. 精度低下の対策の1つ目としては,売場だけでなく,ある特定の商品を今後の分析対象とすることで,小売業とメーカーを組織化しながら販売業務効率化及び顧客サービスの向上を目指す.対策の2つ目として,海外の研究協力者の協力を得て,識別性能が最も優れた機械学習手法のSVM(Support Vector Machine)をはじめてこの分野へ適用できた.これにより,精度の高い結果を得ることができるとともに,研究の新展開も期待できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
論文の研究成果公表が遅れたため. ①ジャーナル論文の投稿料金(2編:Advances in Data Analysis and ClassificationとDecision Support Systems).②次年度に開催される国際学会に参加するための登録料金と旅費(KES2014とIEEE SMC2014).③論文の校閲報酬と翻訳報酬.④分析用の計算サーバーと現場用のノートパソコンの購入.⑤数値解析ソフトMATLABのライセンス購入.⑥実験助補助と資料整理の報酬.
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