研究課題/領域番号 |
25780277
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
左 毅 名古屋大学, 未来社会創造機構, 助教 (70633684)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 仮説の提示と検証 / 店舗の実装 / 消費者行動のモデル化 / 成果の実用化 / 最優秀論文の受賞 |
研究実績の概要 |
平成26年度(2年目)では,第1段階で構築した消費者モデルに基づいて,消費者の店内行動と購買行動の仮説提示し,店舗実装に通して検証を行った.また,実例分析のフィードバックを考慮し,消費者モデルの更新・改善もできた. 1.第1段階の研究結果によると,多数の売場において滞在時間と購入確率の間には,非線形関係・非単調増加関係を示した.これは,従来の研究に比べて,消費者の購買「退屈」現象を明らかにした. 2.さらに,研究計画に提示した仮説もサポートし,店舗の実例でも仮説を検証できた.特に,青少年(10代~20代)の消費者層において,短い滞在時間で高い購買確率に至るが,滞在時間経過の増加を伴って購買意欲の退屈が他年齢層の消費者より顕著であった. 3.また,実店舗の消費者購買履歴をも説明変数として導入し,異なる購買背景における購買に至る意思決定過程の特徴も明らかにした.とくに,既存の消費者の2分類・3分類より,本研究では消費者に6分類できた.それと消費者の店内行動(滞在時間)を統合し,商品に対する意識・行動の違いを分析してマーケティング活動支援(ターゲティングの明確化,広告宣伝の最適化等)のビジネス・インプリケーションを示した. 4.本研究で提案した消費者モデルは,各説明変数と購買の目的変数間に依存関係の可視化ができるし,購買の感度をも決定閾値で定量的に分析・評価できた.さらに,当該消費者モデルは,経営分野及び情報分野における査読者から高く評価された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第2段階では,消費者の年齢,購買履歴と店内滞在時間を統合し,商品の購入に至る仮説を提示して,店舗実験を通してその新規性・有用性・応用可能性を明らかにした.研究計画の通りで,消費者モデルの「学習・構築」,購買の「仮説提示」,仮説の「店舗実装」と評価結果の「フィードバック」を中心として研究を進めていった. 1.従来研究と先行研究を基づいて,本研究で提案した消費者モデルは,消費者に属する各種情報を統合した. 2.滞在時間と購入意欲の間にある非線形関係を明らかにした上で,幾つかの売場において購買意欲の退屈現象も示された. 3.提案した消費者モデルは,消費者行動の分野において有効性・有意性も示して,当該研究の成果の1つとして,国際会議IEEE SMC2014で最優秀論文を受賞された. しかしながら,ジャーナルの投稿論文が拒否されたので,申請時の計画内容より,ジャーナル論文の研究成果公表は遅れることになった.
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今後の研究の推進方策 |
消費者行動分野において多くの観測データは値の連続性を持っている.なお,ベイジアンネットワークは連続値をとる変数を扱うことができないので,クラスタリング手法を用いて離散化を事前に行う必要がある.この時,離散化の結果はモデルの精度に大きく関わっているので,クラスタリング手法の妥当性問題及びクラスタ数の決定問題が生じる.特に,高次元の連続値データの対象を扱う場合,クラスタ数の決定問題は組合せのNP困難な問題となる.したがって,これらの問題に対して,進化的計算手法に基づいて効率的に離散化できる方法の開発を目指したい.新手法では,パラメータフリーを実現できることに着目し,多くの実問題へ自動化解析可能を目的をも果たす. また,近年にディープラーニングが登場してから,長い冬の時代におけるニューラルネットワークが完全に復活している.特徴量抽出にも自動学習することで他の機械学習手法より圧倒的な性能を示した.したがって,本研究の着想点としてはこれまでの研究成果を踏まえ,ベイジアンネットワークに基づくディープラーニング手法の開発と消費者行動への応用を図る.
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