研究概要 |
本研究の目的は、財務諸表監査の経済的機能を実証的に解明することである。特に、日米企業における監査報酬の差異の決定要因、および監査の品質を左右する要因とその帰結の関係を分析する。この目的を達成するため、(1)関連文献のレビュー、(2)データの収集と実証分析、(3)学会報告と意見交換、そして(4)査読誌への投稿という手順で研究を進めるよう計画していた。 本年度は、主として2つ目のテーマに関連して、(1)(2)(3)の作業を行った。まず、関連文献としては、日米の監査実務における異同の実態を解明する手がかりとして、監査報告書において執行社員(パートナー)の名前が日本では開示されているのに対し、米国ではそれがされていないという点に着目した。その違いは、日米で異なる研究機会を与えることになる。これに関連する成果として、①日本と同様の制度をもつ諸外国の研究成果を1本の論文としてまとめて公刊し(髙田, 2013)、②日本企業のデータを用いた実証分析を行い(Suzuki and Takada, 2013)、国際学会と国内の研究会で報告した。①では、日本企業では研究機会があるにも関わらず、パートナーの属性に関する研究が不足していることを指摘した。そして、②では、パートナーがクライアントの監査人として関与する期間が長くなるほど、監査の効率性が増すことを明らかにした。なお、②の研究は現在改訂中であり、平成26年度中に査読誌に投稿予定である。 ①で指摘した問題点は、②の分析によって前進したものと考えられる。しかし、日本企業に関する監査分野の実証研究の蓄積が浅いことには変わりないため、今後も本研究課題の遂行を通じて、当該分野の発展に寄与したいと考えている。
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