本研究では、日本市場における監査の経済的機能を多面的に分析した。この柱のもとで遂行した研究の主要な成果は次のとおりである。①企業は監査人に対する交渉力が強いために、低廉かつ硬直的な監査報酬を支払う傾向にあり、そのような実態が低品質の監査をもたらしている可能性がある。②その一方で、財務諸表監査が強制ではない非公開企業を対象にした場合、監査人による保証サービスを自発的に受けることで、企業は、取引期間の長い銀行から、利息の低下という便益を得ている。この結果は、監査には一定の経済的機能が認められるものの、企業に対する交渉力の弱さが、監査品質の低下につながっているという日本の実態を示している。
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