本研究課題の目的は,企業の行う財務報告の質が,市場全体のリターンの変動では説明できない企業固有のボラティリティ(以降,IVと略称)に影響を及ぼすかどうかを検証することである.この課題では,市場での情報環境が急激に悪化した東日本大震災前後のIVと財務報告の質との関連性を分析し,東日本大震災後,平素より財務報告の質が高い企業ほど,そうでない企業よりもIVが高くなっていたことを発見した.この研究結果は,高IVが,株価により多くの情報が反映していることを示すという考え方と整合的であり,高品質の財務報告を行うことが,効率的な価格形成を促すことを示唆している.
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