平成28年度は、まず上半期は平成27年2月に実施したわが国の地方自治体を対象とするライフサイクル・コストの算定及び活用状況に関するアンケート調査の分析を行い、その成果を日本管理会計学会全国大会にて発表した。 アンケート調査の集計結果より、わが国の地方自治体ではライフサイクル・コストの考え方が特に公共建築物に対して適用されている場合が多くみられる一方で、新規に取得するケースではなく既存の建物の保全計画の策定の中でライフサイクル・コストの考え方が用いられていることが多いことが明らかになった。また、自治体の規模が大きければ大きいほど、ライフサイクル・コストという用語に対する認識が高まり、自治体業務の様々な場面でライフサイクル・コストが活用されている傾向があることが判明した。 続いて、下半期は平成27年度の地方自治体を対象としたアンケート調査にご協力いただいた自治体の中で、インタビュー調査にもご協力いただけるという回答をいただいた18の自治体を順次訪問し、アンケート調査の質問票をご回答いただいた部署に90分間ずつ、合計で34名の自治体職員にインタビュー調査を行った。 インタビューは、質問票の回答状況に基づいた半構造化インタビューとし、各自治体の公共施設マネジメントの取り組み状況を確認したうえで、特にライフサイクル・コストをどのように算定し、ライフサイクル・コストの情報はどのような場面、目的で活用されているか、ライフサイクル・コスト算定のための自治体間連携の可能性等について質問を行った。インタビュー調査の結果、自治体によってライフサイクル・コストへの取り組み状況は異なるものの、いずれの自治体においてもライフサイクル・コストをテキストで解説されるような完全な形で算定している自治体はなく、算定にあたり様々な課題を抱えていることが明らかになった。
|