研究課題/領域番号 |
25780291
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
鈴木 智大 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (50609021)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営者予想 / 予想修正 / 予想誤差 |
研究概要 |
平成25年度は、次の4つの研究を行った。第1に、経営者予想の水準に影響を与える要因や動機に関する分析を行った。結果をまとめると、経営者が報酬面で高株価の恩恵を受ける企業、財務困窮企業、株式市場のプレッシャーが強い企業、予想期に株主から資金調達を行う企業は積極的な予想を、債権者のプレッシャーが強い企業は保守的な予想を公表する傾向にあることが観察された。また経営者交代時に前任者が経常利益を計上している企業は予想の積極性の程度を弱めるのに対し、経常損失を計上している企業は積極的な予想を公表することが判明した。 第2に、経営者による業績予想の修正行動と株式市場の反応について分析を行った。分析の結果、投資家は過去の経営者の業績予想修正行動を踏まえて、新たに公表された経営者予想を評価しているが、上方修正を行う傾向にある企業が減益予想を公表しても、上方修正を行うとは捉えず、むしろネガティブに捉えていることが判明した。 第3に、経営者が掲げる高い目標とその後の企業成長の関係について分析を行った。分析から内生性をコントロールした後でも、事前期間の経営者予想の水準が事後期間の成長性に影響を及ぼしていることが判明した。具体的には、長期にわたり積極的な予想を公表する企業は、企業特性などが類似しているが保守的な予想を公表している企業よりも、利益成長および株価成長を実現していることが明らかとなった。 第4に、なぜ経営者予想では予想誤差が持続するのかについて分析を行った。分析の結果、予想誤差の持続性はインセンティブ、企業特性、開示戦略、情報処理バイアスによって引き起こされていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているのは、本課題の目的である積極的・保守的な業績予想を公表する経営者の動機およびその経済的帰結の一端を明らかにすることができたためである。また平成26年度以降に実施予定であった経営者予想の水準と企業成長についても着手することができた。なお当該研究については当初個人研究を予定していたが、同じ問題意識を持つ研究者がいたため、この研究のみ共同研究を行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は分析を行った論文の修正・投稿を行うとともに、経営者予想の水準の持続性と投資家の反応に関する分析および経営者予想の水準と企業成長に関する分析について、異なる視点からの分析を実施し、頑健性を高めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた業績予想(会社予想)データおよび株価・指標データについて、所属大学がデータベースを購入したため購入が不要となったことが大きな要因である。 平成26年度は前年度に着手した研究を修正するとともに、異なる視点からの分析を実施し頑健性を高める予定である。計画を効率よく進めるためには、多くの学会や研究会等で発表を行い、コメントを頂くことが有益となる。そのため、国内外での論文発表を行う予定であるため、旅費として55万円を計上する。また海外発表にあたり英語論文校閲の費用として人件費・謝金を15万円、統計ソフトウェアの更新費として設備備品費を10万円計上する。 なお繰り越された金額および不要となったデータベース予算は、上記に記載したように当初の予算では自費で渡航する予定であったアメリカ等での学会発表の旅費および統計ソフトウェアの更新に充て、有効に使用する予定である。
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