最終年度は研究課題を遂行すべく以下の3つの研究活動を行った。 1.証券・財務データを用いた統計的な分析として、研究開発活動とその成果の関係を問うものを行った。ただし従前の研究が研究開発の成果として売上高、利益といった財務数値そのものを用いていたのに対して、それら財務数値のなかから企業の競争優位の部分を抽出し(利益の共通性)検証の対象とした。分析の結果、企業の研究開発活動は超過収益力の形成に寄与していること、またその関係には従業員のインセンティブ設計などコーポレートガバナンスの要因が大きな影響を与えていることが分かった。この成果は2015年10月に開催された管理会計学会関西・中部部会において報告した。学会でのコメントをもとに論文をブラッシュアップし海外の学会において発表する予定である。 2.次に企業において研究活動に従事している方にヒアリングを行った。同様のヒアリングは前年においても行っているが、企業によって研究開発予算の決定、体制のあり方などは異なっており、さらなる検証のためにはより多くの企業の実例を積み重ねる必要があるという考えに至った。ヒアリングで得られた成果は、先の1.における仮説設定や以下の3.の先行研究のレビューに活かされている。 3.3年間にわたる研究のまとめとして、課題期間を通して行ってきた研究開発活動に関する先行研究のまとめと自身の研究の位置づけを行った(石光(2015))。先行研究は、研究開発活動がどのように利益に結びつき、それらが証券市場においてどのように評価されているのかについてさまざまな研究を行っている。本研究課題もそれら先行研究の結果を異なる視点から検証し、補強するものとなった。
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