最終年度となる平成26年度は、以下の2点の研究を実施した。 第1に、国内外の口腔ケアに関する文献の検索と収集を行った。具体的には、日本語文献においては、「口腔ケア」「高齢者」「歯科医療」「多職種協働」をキーワードとして検索を行い、約70件の論文等を収集した。これらの文献の多くは、医療現場および介護現場(施設介護、在宅介護を含む)をフィールドとした実証的研究である。これらの文献を分析することにより、医療現場での口腔ケアシステムの現状と課題、また、高齢者介護における口腔ケアシステムの現状と課題の把握を試みた。 一方、英語文献においては、"Health Professions""(Elderly) Oral Care""Sociology of Professional Groups""Inequities within Professions""Inter-professional Collaboration"等をキーワードとして文献検索を行った。その結果、約45件の文献を収集した。 これらは、実証的研究であり、分析の枠組みや分析理論を検討した。 第2に、高齢者の口腔ケアに関するインタビュー調査を実施した。具体的には、口腔ケアに日常的に関与している看護師、および介護ケア従事者(介護福祉士、ホームヘルパー)を対象に、5名ずつのグループインタビューを2件実施した(1名の欠席により、結果9名のインフォーマントとなった)。これらのインタビューから、病院や介護施設での高齢者の口腔ケアの実施状況を把握するとともに、口腔ケアが十分に行われない要因を探った。その結果、人員不足やケアの優先度の問題が指摘されるとともに、「家族」「(地域性に根付いた)本人=サービス受給者の長年の習慣」という要因が大きく影響していることが示唆された。 これらの調査結果に基づき、今後は学会発表および論文執筆を進めていく予定である。
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